事務局日誌 Blog

人も生き物も豊かになる水の惑星(市民のための環境公開講座レポート) 2019.12.03

こんにちは! CSOラーニング生の鈴木です!
2019年度の「市民のための環境公開講座―PART1―」が終了いたしました。暑い中のご参加ありがとうございました。

PART1 のテーマは〈人も生き物も豊かになる水の惑星〉です。 五箇公一氏、古川健氏、呉屋由希乃氏から興味深いお話を聞くことが出来ました。 今回の市民講座で僕が感じたことは大きく3つあります。
・生物多様性、生態系
・環境教育
・身近でできる環境配慮
この3つを中心にお伝えしていきたいと思います!

生物多様性、生態系

第1回の講座では五箇先生から生物多様性に関するリスクについてのお話を聞くことができました。みなさんは生物多様性のリスクと聞いて何が浮かびますか?僕は外来生物の問題や里山の管理不足、乱獲問題、キーストーン種の消失などが思い浮かびました。これらの問題はどれもが生態系のバランスが崩れることで起きています。
農業で考えてみます。一つの畑に単一植物(たとえばジャガイモだけ)が植えられているとします。そこに、ジャガイモの葉っぱだけを食べる虫が飛来してくると瞬く間にその畑は全滅してしまいます。それを、ジャガイモだけではなく、にんじん、かぼちゃ、さといも、だいこん、タイム、ラベンダー等々が植えられているとどうでしょうか。種の多様性、景観の多様性が豊かで、ごちゃごちゃしていながらも自然なままの自然がそこにあると思います。
この状態で先ほどと同じ、ジャガイモの害虫がやってきました。少量のジャガイモは被害にあったものの、全滅はしません。それはジャガイモの葉を食べる虫を餌とする虫が近くに棲んでいたからです。このような相互作用の複雑さが生態系のおおまかな仕組みになっています。この生態系を支えているのが生物多様性です。ジャガイモの例のように生物種が増えることで全滅のリスクを回避することができます。実際にはジャガイモの例よりも大きな規模で生態系が構成されているので、かなり複雑な関係性を築いています。

さて、どうして生物多様性が大切なのでしょうか。絶滅してしまうと悲しいから?同じ種ばかりの景観はつまらないからでしょうか?
様々な意見があると思いますが、1番の理由は人類が生態系から受け取ることのできる恩恵を途絶えさせないためです。その恩恵を「生態系サービス」と言い、ほとんど生活の一部になっている事ばかりです。僕が意識をしていないだけで、こんなにも沢山の恩恵を受けていることに驚きました。
『自然からの恵みを受けている』という感覚は教えてもらうというより、自ら気づき、感じとるものだと思います。農薬による環境汚染問題を訴えた「沈黙の春」で有名なレイチェル・カーソンも著書「センスオブワンダー」で「感じることは知ることよりも重要」だと述べています。感じること=体験するということです。講座の第2回でアクアマリンふくしま・副館長の古川さんによる体験型の水族館のあり方についてのお話から、それを改めて感じました。

命の教育

みなさんは水族館で、自分の食卓で「魚の命を頂いている」ことと結び付けながら魚をみていますか?僕はそんなこと思ったことはなく、純粋に楽しんでいました。
アクアマリンふくしまは「命の教育」を重要視しています。命の教育とは?これを小さなテーマで分けてみます。
1)自然体験の場を整備・提供し、五感を通して生命を実感させる
2)多様な生物のつながりによって生命が育まれていること、人間もその一端を担う存在であることを知らせる
3)生き物の命を頂戴することの意味を考えさせる
4)持続可能な社会について考える

具体的に何をしているかというと、
(1・2)自然体験の場として施設の周りに川や山、海をテーマにした『BIOBIOかっぱの里』、『蛇の目ビーチ』、『ワクワク里山縄文の里』を作りました。そこでは主に子ども達がそれぞれの場所に棲む生き物たちと触れ合うことができます。
(3・4)そして、釣り体験、調理体験を子どもたちが自ら体験することで生き物の命を頂いている実感を得ます。
(2・3)館内の水槽ではイワシ、マグロ、カツオを一緒に展示しています。この展示の仕方だとイワシはマグロやカツオに食べられてしまいます。つまり水槽内での弱肉強食の世界を垣間見ることができます。さらに、サメの卵やウシガエルの死骸も展示しており、生物一個体の生態系での循環についても一緒に学ぶことができます。
(4)また、個体数が少なくなってきている魚を極力避け、数が多く安定的に漁獲できる種をできるだけ食べるように呼びかけることも行なっています。

僕が水族館に行って感じることは、展示空間や、そこに棲んでいる魚が綺麗だということ。知らない世界を水槽越しに体験することができる。この2つです。
しかしアクアマリンふくしまでは、『綺麗』や『非日常』をただ与えてくれるのではなく、私たちが日常の中で意識をしていない『命のやりとり』について語りかけてくれます。アクアマリンふくしまの展示や体験を通じて、『命を頂いている』という感覚を実体験し、訴えてきます。この感覚を得ると、私たちはより環境に配慮した生活を送ることができるのではないでしょうか。例えば、使いきれない量の食材を仕入れない。食べ物を残さない。過剰に飲食物を消費しないなどです。
水族館から、海の生物を食べることを通して、環境について考える回となりました。次は海の生物の環境について考えてみたいと思います。

海の中の森

第3回の講座では呉屋さんから『サンゴに優しい日焼け止め』についてお話ししていただきました。
サンゴが動物だということをみなさんは知っていましたか?僕は知らなかったので、とても驚きました。しかし動物でありながらも、その場から移動することは困難です。比較してわかりやすいのがイソギンチャクです。
サンゴの体内には褐虫藻と呼ばれる植物性プランクトンが生活しています。この褐虫藻がいるおかげで栄養を得て、サンゴは生きていけます。

褐虫藻は植物なので、光合成ができます。この光合成によってアマゾンの森以上の二酸化炭素吸収効果を発揮していて、サンゴの防波堤としての価値と合わせると、3000億円以上の自然環境へのプラスの効果を発揮しています。数字が大きすぎて、あまり実感が湧きませんがものすごい効果があるのだと感じることはできると思います。こんなに素晴らしい生態系サービスを与えてくれるサンゴと褐虫藻ですが、急速に個体数が減少しています。それは
・地球温暖化
・オーバーツーリズム
・排水汚染、海洋汚染
によるものです。

みなさんは日焼け止めを規制するハワイのニュースを聞いたことがありますか?日焼け止めに使用されている成分がサンゴに悪影響を与えていることが発覚したためです。その成分はオリンピックプール6杯分(2、500m3×6=15、000m3)の量にほんの一滴垂らしただけで、サンゴのDNAに悪影響を与えるほどに強力な影響力を持っています。

これらの、サンゴの持っているパワーだったり受けている被害の大きさは、スケールが大きすぎて実際に起きている実感を得ることは難しいと思います。「スケール感が大きすぎて実感が湧かないこと」と「環境問題」はかなり密接に繋がっていて、多くの人は環境問題について知っている、気づいていても、実際にアクションが起こせない人もいるのではと感じます。
僕が京都でインターンシップに参加した時、市の有形文化財に泊まり、活用方法を考えることが課題でした。守るべき、京都らしい町並みを形成しているその文化財を『守りたいねー』『維持しなくちゃ』という意思は強く感じることができたのですが、『行動を起こさなくては!』と考えている人は少ないように感じました。『こんな小さなことをしたって何も変わらない』と感じる人が多いのかもしれませんが、そうではなくて、「小さなことが積み重なることで大きなものになっていく」と考え方がシフトしていったら、よりみんなの行動がいい方向に変わっていくのではないかと思います。

私たちには環境をより良い方向にしていくためにできることがたくさんあります。たとえば今回の講座では、サンゴを守るために、海を守るために、それらに優しい日焼け止めを使用すること。むやみな消費活動をしないこと。外来種を野生に返さないこと。そして、こうしたアクションを起こすためにはまず知ることが大切です。
さらに、知識だけ、卓上の理論にならないように、体験することによって『感じる』ことがより重要になります。『感じる』ことは、大自然や水族館でなくてもどこにである木々や川、道端や私たちの身近なところでもできるはずです。

時間に追われて、速さが常に要求される社会ですが、一旦、足を止めて、自然の声に耳を傾けてみると何かに気づくことができるかもしれません。何かに気づくことができたらそれは、私たちが行動するための火種になるかもしれません。

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