事務局日誌 Blog

ブータン王国ハ県のご紹介 2015.03.19

さて、今回はプロジェクト・エリアであるハ県のご紹介をしたいと思います。ハは、ブータンにある20の県(ゾンカク)のうちのひとつで、ブータン西部に位置し、北は中国のチベット自治区、西はインドのシッキム州、南はサムツェ県とチュカ県、東はパロ県と接しています。国境線があるため、政治的な理由から長らく観光客の受け入れは制限されていましたが、2002年以降は外国人も自由に訪問できるようになりました。

※ブータン全土の地図はこちら⇒ブータン政府観光局

標高は1,000m~5,600m、人口は9,000名弱、面積は約1,900平方キロメートル(香川県とほぼ同じ広さ)で、そのうち約75%は森林に覆われ、農地利用は2%未満となっています。北部の住民はヤクの放牧を生業とし、農地では、蕎麦、大麦、小麦、じゃがいも、りんご、野菜類が栽培されています。ハには4つの小学校、3つの中学校、2つの高校があり、それ以上の高等教育は、県外で受けなければなりません。ハの人々は力強いとも言われ、ブータンで人気のTV番組、その名も『ストロング・マン・コンテスト:ニャゲ(Nya-Goe)』でもハ出身男性が大健闘しました。体力があり、マウンテンバイク走者でもある現首相、ツェリン・トブゲイ氏も、ハ県の出身です。

ハをプロジェクト・エリアに選定した理由

続いて、ポプジカに次ぐCBST開発エリアとしてハを選定した理由をご説明します。

 ★アクセスの良さ

 ハは、国際空港のあるパロから64km、車で約2~3時間で行くことができ、日本人を中心とした、滞在期間の短い観光客も、効率よく訪れることができます。

★豊富な観光資源

 ハは、自然資源、文化資源共に、「地域に根ざした観光地」としての大きなポテンシャルを持っています。

 自然資源としては、ハ周辺エリアでのトレッキングをすることで、点在する美しい湖、ブータンの国花であるブルーポピーやハの固有種であるホワイトポピーといった高山植物、珍しいニジキジやナキウサギなどの動物を観察することができます。そして、ハ~パロ間の標高約4,000mのチェレラ峠からは、ヒマラヤ連峰の美しい眺望を楽しむことができます。

 文化資源としては、ハ土着の神、アパ・チュンドゥ信仰に関連した聖地訪問、祭への参加、伝統儀礼体験、昔ながらの趣が残る農村での農家泊や文化体験といった素材が眠っています。

ハの固有種、ホワイトポピー(白いケシの花)

ハの固有種、ホワイトポピー(白いケシの花)

 

土着のアパ・チュンドゥ信仰と関係の深い絶壁の僧院、ジュネ・ダ

土着のアプ・チュンドゥ信仰と関係の深い絶壁の僧院、ジュネ・ダ

 

★ブータン政府の政策補完

 ブータン政府はハ県の開発方針として、①農業開発、②観光開発、③貧困削減、の3本柱を掲げており、観光の優先順位はとても高いといえます。それに基づいて、2010年に『ハ県観光開発10年計画』が100ページ以上にわたるボリュームで作成されました。しかし、計画を実行するに当たっての強力なリーダーシップが無かったこともあり、5年たった現在でもほとんどが実行に移されていません。また、地域コミュニティがどのような形で観光による恩恵を受けるか、といった具体的な記述もありません。今回JEEFとRSPNがハで地域に根ざした観光開発を行うことは、もとも計画されていた政策を、より良い形で実行する後押しにもなるのです。

★観光地としての、のびしろ大

上記のようなポテンシャルがあるにもかかわらず、観光客の受け入れ開始が他の地域と比べて遅かったこともあり、これまでハの観光分野での投資は、官民を問わずほとんど行われてきませんでした。その結果、以下のグラフが表すとおり、ブータンを訪れる観光客のうち、ハに宿泊したのはたったの1.17%に留まっています(2013年1年間の統計)。これは逆に捕らえれば、ユニークな観光素材の開発とプロモーション次第で、「地域に根ざした観光地」として花開く可能性を十分に秘めているとも言えるのです。

出典: Bhutan Tourism Monitor2013, Tourism Council of Bhutan

出典: Bhutan Tourism Monitor2013, Tourism Council of Bhutan

 

政府や旅行会社など、ブータン内部の関係者の間では、「より開発が遅れている東部ブータンで事業を行うべきだ」という声もありました。しかし、東部ブータンへはまだまだアクセスが悪く、空港のあるパロから陸路で丸2日かけて行くか、南東部のインド国境から陸路で入国する必要があります。せっかくCBST開発を行っても、その後に訪れる観光客が極端に少なければ、受け入れる地域コミュニティのモチベーションも下がってしまい、逆効果です。東部ブータンにはすでにヨンフラ空港が建設されているのですが、山間の狭い土地に建設したということもあり、滑走路がまだ整備中。国内線が正式に就航し、アクセスが改善したら、東部ブータンも観光地としての大きなポテンシャルを持っていることは間違いありません。それを見込んで、今回のプロジェクトでは、東部ブータンの県職員も部分的に研修等に参加することになっています。そちらの様子も、今後随時ご紹介していきたいと思います。

ハが潜在的に秘めた可能性、少しは伝わりましたでしょうか?これからこの地が観光地として、地域コミュニティと共にどう花開いていくか・・・どうぞ、日本から見守っていただければと思います。

来週はいよいよ、ブータン・日本の関係者一同で、初のハへの視察旅行へ行ってまいります!

文責:JEEFブータン駐在員 松尾 茜

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