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「市民のための環境公開講座」パート3第1回『俯瞰的視点で環境問題を考える』レポート 2016.12.06

こんにちは。インターン生の島津です。

 

「市民のための環境公開講座パート3」第1回が11月1日(火)に開催されました。 

今回は千葉工業大学惑星探査研究センター所長を務める松井孝典先生をお招きし、『俯瞰的視点で環境問題を考える』というタイトルでご講演いただきました。

地球環境システムから哲学・古代オリエントに至るまであらゆる知見から横断的に語り、そこがそう繋がるか、と新たな発見の連続でした。

環境だけでなく、世界史や文明論が好きな方にも非常に興味を持ってもらえるお話だったかなと思います。

 

生物圏と人間圏

 

生物圏の中で人間圏と呼ばれる共同体、文明の誕生が環境問題の始まりと考えます。自然のフローの中で生きてきた人間が、農耕や牧畜などストックの活動によって徐々に地球システムに影響を与えるようになります。

そして産業革命期以降、爆発的に人間圏の影響(エネルギー消費)が拡大していき、現在の危機に繋がっている、というのが大史です。

 

問題を整理すると、生物進化の生き方と人間圏での生き方、生物的進化と文化的進化にミスマッチが生じている状況であると言えます。

 

身近な例でいえば病気。ホモ属が200万年かけて体を進化させてきたものと、1万年の急激な文化的な進化によるミスマッチが生じた結果現代の病がある。これを先生はミスマッチ病と呼びます。

 

今は食卓に色々な食べ物が並んでおり、ヒトは元来何食動物なのか、ふと思いました。果実や野菜、穀物はアレルギーを除いて食べることができ、肉も加熱すれば大抵食べられる。小さな疑問ですが、探求を続けていきたいと思います。

 

我々は何者か

 

人間圏が環境問題の起源であるとすれば、ホモサピエンスとは何者でどこからきたのか、そして宇宙における知性の存在と文明の意味を問い、これからどこへ行くのかを考える必要があります。

 

根菜等の採集生活から、狩猟採集生活を営むホモ属へと進化し、ホモサピエンスへ至るにつれ、脳の容量変化も起きた。高い認知能力と脳における情報処理が発達すると、共同幻想を抱くことができるようにもなった。これが作物収穫時期の予測を可能にし、共同作業による生産性の向上を招くようになったと考えられます。

 

自然状態と社会については、ルソーやホッブズらの系譜から、延々と議論されてきています。ヒトは本来どんな状態にあったのか、大胆な切り口で考えてみると、生き方の指針が意外に見えてくるかもしれません。

 

俯瞰的な視点で

 

涌井先生の言うように、1万年ほどで地球環境システムが限界に到達しようとしている生き方は、たしかに良い生き方ではないかもしれません。我々は今人間圏というシステムを採用している以上、なぜ人間圏を作って生きなければならないのかを考える必要があります。

 

まず自分たちにできることは、消費スタイルをもう一度考えることではないでしょうか。

 

顕示的な消費でも、ミニマルな消費でも何でも良いと僕は思います。

まずは何を基準にしてなぜそれを買うか、それが利己的なだけではなく、地球環境システムまで見通したものであればより良いのではないかなと感じます。

 

20世紀最後の10年は様々なことがありました。系外惑星の発見、超弦理論の発展。我々がどこからきてどこへ行くのかということを科学的な研究が進んでいます。

つまり、環境問題を考えることは、知の世界がどこまで進んでいるかを考えること。それが「俯瞰的な視点で」ということ、と締めくくりました。確かに、日々の報道を見ていても、現代の科学は私たち市民の想像を遥かに超えた発見の連続です。

 

~質疑応答を紹介します~

松:松井先生  質:質問者

 

質:ナチュラリストやミニマリストなど文明と逆行するような考えもある。我々はどこへ向かっていけばよいのか。

松:生き延びる、という一点のみを考えるなら昔の江戸の生活に戻ればいい。人間圏でどう生きるかということを各々が考えねば、生きる意味もわからなくなる。

 

質:欲望のコントロール、宗教はそのような役割があったのではないか。

松:ゾロアスター教、ザラスシュトラを考えてみる。その始祖はそれまでの神話に代わって人間の英知を神様に置いた。人間は自分の英知で判断して生きなさいということ。ゾロアスター教は善悪二元論であり、人間の本来は善のために戦うべきだと言っている。

 

まとめ

 

 元々世界史が好きで、今回はそれを環境という大局的な視点から考える非常に興味深い講演でした。最後の質疑では、経験談を豊富に交え、中央・西アジアへの興味の射程をお話し頂きました。古代の話は今まであまり勉強していませんでしたが、俯瞰的な視野で物事を整理し繋げ、考えることの楽しさを感じることができました。

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