機関誌「地球のこども」 Child of the earth

考えるっておもしろいかも!?第4回 待つということ 2014.08.27

私が大切にしていることの一つに、子どもたちが、人から言われなくても自ら進んで考えようとする力、学ぶことに対する積極的な姿勢を育てるというものがあります。

先日行われたワークショップでこんなことがありました。この日のプログラムは、子どもたちが自分で森から集めてきた葉っぱを形の違いで分類し、葉っぱ図鑑を作るというものでした。袋いっぱいに葉っぱを集めてきた子どもたちは、机に戻ると一斉に袋から葉っぱを出して夢中でいじり始めました。講師が葉っぱの分類方法について説明をしようとしますが、ほとんどの子が聞いていません。

そこで、講師は説明するのをやめ、子どもたちが葉っぱをいじるのを見守り始めました。程なくして、ただ葉っぱをさわるのに飽きた子が葉っぱを大きい順に並べ始めました。すかさず講師はその子に「おー、上手に分けられたねー!じゃあ次は形の違いで分けてみない?」と声をかけました。すると声をかけられた子だけでなく、周りでそのやりとりを見ていた子たちも形の分類に挑戦し始めました。 ここでのポイントは2つあります。1つは、一見ふざけているようでも子どもたちなりに探究を行っているのだと信じ、彼らがやっていることを無理に止めないこと。もう1つは、子どもたちから自然に出てきた科学的な芽を見逃さず、プログラム本来の目的につなげていることです。子どもによって時間はかかりますが、必ずその言動の中に小さな科学の芽が現れます。その芽に出会えるのを待つのです。

時間が短いプログラムのときは活動中には芽が出てこない場合もあります。それはそれでいいのです。やらないでいただきたいのは、無理に芽を出そうとして子どもたちの探究に横槍を入れることです。やり方を指定し、答えをちらつかせ、子どもたちの発言を拡大解釈して理想的なゴールへ誘導することです。

自主性というのは、自分の行動に責任を持つということと近いように思います。大人が指定したやり方で実験を成功させるより、子どもたち自身が考えたやり方で失敗する方が学ぶことが多いということもあります。子どもたち自身が学びを組み立てていけるように「待つ」というお話でした。

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GEMS(ジェムズ)は、カリフォルニア大学で開発された子ども対象の科学と数学の体験学習プログラムです。 大人が知識を教えるのではなく、子どもたち自身が実験を企画し、話し合いながら結論を導き出すようにアクティビティが構成されています。

ジャパンGEMSセンター

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鴨川 光(かもがわ ひかる)

1987年茨城県生まれ。ジャパンGEMSセンター研究員。 早稲田大学大学院教育学研究科修了後、2013年6月より現職。子どもの思考力や社会性の発達について研究している。ワークショップやボランティアを通して子どもたちと一緒に成長中。

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