機関誌「地球のこども」 Child of the earth

「自分が自分で自分を育てる」を考えるキャンプ 2019.02.15

文:山路 歩(NPO法人体験学習研究会

「自分が自分で自分を育てる」をテーマに、アドベンチャー教育をベースとした、キャンプを実施している山路さん。今回はその中で、自立を育むために大切にされている、子どもとの関わり方や環境について紹介していただきました。

「決める」に出逢う

私が続けている教育キャンプでは、一つひとつの「決める」に出逢うことを大切にしています。そして「決めた」から起こる様々なことを体験し続けることが

  • 考える自分
  • 判断する自分
  • 安全をつくる自分

に繋がると考えています。

キャンプ開始早々に「自分で決める」ことを話します。しかし、どんなに丁寧に話しても、キャンプ序盤は、「~していいですか?」という言葉が飛びかいます。「着替えていいですか?」「遊んでいい?」「トイレ行っていい?」「水飲んでいいですか?」などなど。ささいなことから、みんなの動きにかかわる大きなことまで、幅広く許可を求めてきます。

私も「うん、いいよ!」なんてうっかり言ってしまうことも多いです。

しかし、「して良い、して悪い」を私が決めている間は、子ども自身が決めていないので、自身のやったことと、その結果がつながりません。許可された段階で思考がとまっている(ように見える)ことも多いです。自分で決めるからこそ、その結果に心と頭が動き、「次はどうしよう!?」となるのだと日々実感しています。

問いかけに、どう反応するか

さて、この許可を求めてくる問いかけに、どのように反応すればよいのでしょうか? 私は、本人が「決める」に出逢うチャンスと考えています。

「していい?」と聞かれても、「それは、許可が必要だと今判断したの?」「決定権を私に渡したということになるけどいい?」など、あえて面倒くさい訊き方をしながら、立ち止まってもらうことを大切にしています。「私たちが判断したり、許可を与える人ではない」ということを子どもたちに伝え続け、自然や仲間に向き合うことを促します。

これを繰り返すことで、子どもたちは劇的に変化し、子ども同士の関係も変化します。キャンプ中盤になると、お互いに、「決める」ことを促し合ったり、「決める」ためのサポートをしたり。また、決めるために、一歩先よりさらに二歩先の状況や危険(リスク)について話し合うことも少なくありません。 

やりとりの注意点

  • 勇気くじき・説教・嫌みにならないよう「使う言葉」に細心の注意を払う。
  • 面倒くさいやりとりの中にもユーモアを!
  • 「決める」と「責任」をセットにしない

大人になると、「決める」と「責任」はペアであることが多い気がします。しかし、まだ決めることに慣れていない子には、まずは「自分が決めた」ということに豊かに出会ってもらうことが大切なのではと考えています。だから、「決めたからには責任があるのだ!」という重たいものを渡して「だから真剣に決めよう」なんていう関わり方はせず、決めたことを認め続けるようにしています。

ひとりの時間。内省する時間をつくる

仲間とのふり返りも大切ですが、同時に様々な体験をした自分を、のんびりと丁寧にふり返る時間が大切です。自分自身とお話をする「ひとりの時間」です。「今日、自分はどんなことを決めたのか?」「仲間との間に何が起きたのか?」「それってどうして?」などなど。

雄大な自然は「ひとりの時間」をより豊かにするチカラを持っています。一瞬にして内省の世界に誘います。その中で、力強く一点を見つめる子どもたち。

 

何を感じ、何を考えているのか。私にはわかりません。しかし、自分自身を感じ、考え、自分の内側に何かを蓄えている。とてもとても豊かな時間なのだろうと私は考えています。

山路 歩(やまじ あゆむ)

1977年生まれ。NPO法人体験学習研究会代表理事。日能研調査開発室。JAPAN OUT- DOOR LEADERS AWARD(JOLA)運営委員。アドベンチャー教育を根っこにした教育キャンプのプロデュースを続けている。JOLAではアワード審査にルーブリック評価を導入。「人が学び合う場」について考え、実践する日々を過ごす。

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