機関誌「地球のこども」 Child of the earth

パート2:バングラデシュ現地からの環境レポート 〜環境問題の概要編〜 2016.08.05

街の中にあるごみ集積場(クルナ).

これから6回に渡り、バングラデシュにおける環境問題の現状やその取組み等、市民レベルの立場に立って現場から見た声をお伝えていきます。

パート2第1回目は、バングラデシュの環境問題に関する全般的な概要について報告します。

皆さんは、バングラデシュというと、どのような国だと想像されるでしょうか。「カレーを毎日食べる」、「イスラム教徒の国」、「土地が低く洪水等の自然災害が多発する」等のイメージを持たれる人が多いのではないでしょうか。

私は、2013年からバングラデシュで環境教育の技能を活用し、地域の適切な自然資源管理による地域住民の生活改善や、ウエイスト・ピッカー(有価廃棄物回収人)の支援事業等、草の根レベルでの環境活動を展開しています。

現地の人々の暮らしぶりや、事業に関わる人々との意見交換で、観てきた現場は多くの環境問題が山積していました。

生活系の環境問題

バングラデシュの人口は、1億6千万人程度で世界第7位、国土面積は約15万平方キロメートル(北海道の約2倍)、都市国家(シンガポール等)を除くと世界で一番人口密度の高い国です。

首都ダッカやクルナ等の都市部では、ごみ、生活排水による汚染や建設資材用のレンガ製造工場からの煤煙、自動車による大気汚染等の課題が深刻です。

市内にあるごみの集積場所では、ごみの散乱や異臭にハエが群がる状況が随所に見られます。また、一日中、都市の中心部でインタビュー調査をしていると、大気の汚れで鼻の中が真っ黒になってしまいます。そのため、私などは長期で現場に滞在すると、鼻毛が早く伸び、大気汚染の深刻さを感じます。

上述の課題が、自分たちの日常生活と直接関係していることを住民が理解し、行政、企業や住民が連携して適切な行動を起こすための環境教育を通じた意識改革が、今後の大きなカギとなります。

ごみと生活排水が混在する都市コミュニティ(クルナ)

ごみと生活排水が混在する都市コミュニティ(クルナ)

地球規模での環境問題

バングラデシュは国土面積の9割以上が海抜が低いデルタ地帯に位置していることから、雨期になると河川の氾濫や家屋への浸水が、農村部や都市部で大きな課題となっています。近年は、サイクロンの直撃を受ける回数や、局地的な大雨による洪水、家屋が浸水するケースが多発しています。

これらは、温暖化による気候変動との関連等、地球規模での環境問題と直接関連しています。自然災害に備えるためにも、防災施設の建設に加え、意識を高めるための個人やコミュニティレベルでの教育が、益々必要となります。

2009年にバングラデシュの沿岸地域を襲ったサイクロン アイラ(シャムナガール農村)

2009年にバングラデシュの沿岸地域を襲ったサイクロン アイラ(シャムナガール農村)

自然系の環境問題

世界最大級のマングローブ林と湿地帯が広がり、世界自然遺産に登録されているスンダルバンス地域周辺では、自然と人との共生が求められています。この地域の対岸に位置する村では、住民は世界自然遺産と隣合わせで暮らしています。

しかし住民の、動物や自然資源の利用が適切ではありません。例えば、捕獲が禁止されている区域で換金性の高いイルカやカメを密漁することや、燃料を確保する目的でマングローブ林の違法伐採が行われる等、資源の搾取が課題となっています。また、農家による農薬や化学肥料の多用、漁をする際に魚を殺すための、薬品の利用で、生態系や人間の健康への影響が懸念されています。

人口の8割が農村地域で暮らしていることから、農家や漁師等の環境への意識を向上させていくことが、国の自然環境を保全していくうえでも、極めて重要です。

文責:佐藤秀樹(JEEF職員)

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