こんにちは。JEEFインドネシア事務所インターンの菊川です。
今回はパームオイルについて投稿させていただきます。
昨年末、私はJEEFインドネシア事務局所長の矢田さんに同行し、矢田さんの長年のフィールドであるカリマンタン島のロンペジェン村を訪れました。
この村は、島で最大の都市サマリンダから220㎞ 車で内陸に10時間ほど、東クタイ県の大きな川沿いにあり、ダヤック民族の人々が焼き畑農業や狩猟を行い自然と共に暮らしています。
…しかし、どうやらここ数年で彼らの生活が変わってきているようです。
村の人々と森のはずれに出向いた私たちは、果てしなく広がるアブラヤシのプランテーションを目の当たりにしました。そして、ここは数年前まで豊かな森だったことを知りました。
インドネシアは世界一のパームオイル産出国です。
パームオイルはアブラヤシを原料とした植物油で、調理油、カップめん、パン、チョコ、ポテトチップス、洗剤、化粧品など多くのものに使われています。
日ごろあまり意識する機会はありませんが、パームオイルは日本人の生活になくてはならないものとなっています。
また、動物性油脂に比べると安価で、体によいとされており、2001年から昨年までの世界消費量は2倍以上増加しています。
パームオイル産業はインドネシア経済を活性化する一方、赤道直下の豊かな熱帯雨林はその原料であるアブラヤシのために根こそぎ破壊されてきました。
この村のある東クタイ県内では、2007年から2011年までの5年間でも8万haから22万haに増加しており、県政府はアブラヤシ農園を100万haまで拡大することを目標に掲げています。
ダヤックの人々が稲を植え、収穫し、また森に戻すという数十年のサイクルを守り続けてきた焼畑の森は一面のアブラヤシに変わっていました。
彼らはこれまで自給のための米は焼畑でまかなっていましたが、米を他から購入するようになりました。
一度アブラヤシのプランテーションになった森はもう元には戻りません。
地平線まで続くアブラヤシのプランテーションを実際に目にして、環境を壊す「環境破壊」というよりも、自然資源を取り尽くすという印象でした。これはもういくら頑張っても、二度と戻らないと思いました。
プランテーションのために豊かな生態系は破壊され、ダヤックの人々は狩りが出来なくなる。そして、狩りの技術や狩猟の食文化も失われ、今後河川汚染も深刻化するでしょう。
他方、村の雇用が生まれ、疑惑付ではありますが農園地が分譲され、アブラヤシを運搬するために道路が整備される。おかげで村人は学校や仕事のために都市部に行くことが容易になりました。
私たちが毎日使っているパームオイルの影響は、単純に生産地の森のみではありません。プランテーションとその周辺に生きる人々の自然環境や社会環境にも影響を与えています。
かつてアブラヤシのプランテーションになってしまったこの森で狩りをしていたダヤック民族のお父さんの背中が何かを物語ってるようでした。