文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)
今回からのコラム「パート3」では、地域をどのようにデザインしながら途上国の主要課題である、開発と環境保全の両立、貧困削減や地域振興を図っていくのかについて、筆者の約15年の途上国での国際協力業務の経験から報告します。特に「教育による地域づくり」の視点を重視し、ワークシート付で6 回にわたり紹介します。
アジアの社会・経済発展と貧富の格差の拡大
アジアでは経済発展に伴い、人々の暮らしが豊かになっている一方で、国や地域によっては、水、電気、道路、橋等のインフラが未整備なために、生活環境が十分でない場所が多々存在します。また、急速な社会・経済の発展が貧富の格差を生み出し、公平で平等な社会づくりが課題となっています。市場原理が働く競争社会の中では、どのような方策や取組みを導入しても、排除されてしまう人たちを生み出してしまい、全く貧困層のない社会などありえないかもしれません。
しかし、社会的に脆弱な立場に陥りやすい人たち(子ども、女性、障がい者や先住民族等)や貧困層の意見を反映させた、地域が一体となった社会・経済開発を、持続的且つ長期的に進めるためには、学校や家庭での教育に加え自治会やコミュニティによる、地域での教育プログラムの実践が大きな役割を担っていると考えます。
地域の組織化と地域社会教育
開発途上国では、家庭の事情で小学校へ行けずに途中退学する子どもが多いのが現状です。彼らへの識字教育、職業教育や環境教育等を含め社会教育を地域ぐるみで提供することが、貧困を緩和するためにも、また、地域社会全体の発展を考えた上でも極めて重要です。
そのためには、地域での包括的な教育プログラムを実践するための組織基盤の形成や、行政、教師、自治会等を含めた教育ネットワークの構築が必要とされています。
開発途上国の環境教育による地域づくりを考えてみよう!
それでは、次の開発途上国における写真2点(ベトナムとバングラデシュ)をそれぞれ観察し、どのような環境問題があり、地域でどのような対応策を講じることで解決の方向性を見出すことができるのかについて、子どもや女性の視点も考えながら、皆さんがこれまで学習してきた知見や経験を活かして、想像力を働かせながら考えてみて下さい。インドネシアは一つの例として挙げています。対応策については、様々な考え方があるかと思います。
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社会的弱者を巻込んで地域社会が一体となった、包括的な教育による地域づくりは、今後の課題の一つであると私は感じています。地域住民同士が学びの場をどれだけ多く創出し、自分たちの地域社会づくりを自分事として捉えて進められるか。また、地域住民同士の連携と協働、そしてそのリーダー育成が開発途上国の今後の地域づくりの大きな課題の一つであると考えられます。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。