文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)
今回は、適正な自然資源管理の下、住民の主体的な参加と関係者との連携による、自然の恵みを活用した商品開発・ブランド化を目指した地域づくりについて考えます。
多くの開発途上国の農村部は、第一次産業(農業、林業、畜産業や漁業)が主であり、自然を基盤とした住民の営みが行われています。農村地域では、収入の低い第一次産業だけで生計を立てることは難しく、また、雇用情勢が不安定な中で代替の労働を確保することは困難です。
このような状況の中、人々の生計向上を図る取組みの一つとして、その地特有の自然の恵みを発掘し、それを活用した商品を開発、さらにブランド化を目指した地域づくりが考えられます。
農村部の住民は、仲介業者を介して農林産物の販売を行っている場合が多く、その買い取り価格は安く不公平です。しかし、その習慣が根付いているため打ち破ることは難しく、住民は十分な収入を得ることができません。
この不公平な壁を打ち破って住民が市場でマーケテイングチャンネルを開拓していくには、自分たちで商品開発やブランド化を行う必要があります。
例えば、JEEFは地域と協働して、インドネシアでのヤシ砂糖を使った生姜湯や、バングラデシュでの天然はちみつ、マングローブの実のピクルス、ニッパヤシで編んだ籠等、森の恵みを活用した非木材林産物を開発してきました。住民が市場を意識した製品開発を進めるためには、「地域の組織化」「様々な関係者の巻込み・連携」「能力開発」を地域が一緒になって進めていくことが重要です。
組織化による基盤構築
非木材林産物の商品販売を行う際には、ある一定の原料を確保する必要があります。何人かの住民が集まったグループを協同組合等として組織化し、販売に必要な量を確保することと、一緒に行動していくためのルールづくりが重要です。例えば、組織運営の方法、資金の貯蓄・管理方法等の規則を明確化し、その透明性を図ることで組織を継続することができます。
関係者との連携構築や情報交換・学びの場の創出
積極的に地域の産業、例えば、天然はちみつを発展させていきたいという志の高い関係者(政府、企業、仲介業者、大学、NGO、住民等)を巻込み、連携を図っていく必要があります。地域のリーダー、住民グループやローカルNGO等の現地組織、そしてJEEF等、外部支援者が積極的に情報交換や学びの場づくりを働きかけていくことが求められます。
商品開発・ブランド化を図るための能力向上
一般的に、地域住民の多くは自然の恵みの商品化・ブランド化に関する経験が十分に備わっていないことが予想されます。そのため、それらの能力向上を図り、研修やワークショップを定期的に開催していく必要があります。そして、商品の品質保持・向上を図りながら、顧客の信頼獲得へつなげていくことが、商品のブランド化と住民の持続的な生計向上につながります。また、自然の恵みを過剰に搾取することのないよう、適正な自然資源管理手法に関する研修も盛り込む必要があります。
ワークシート
今回のコラムでは、自然の恵みを題材として関係者の連携・協働による地域づくりを紹介しました。本件を踏まえ、天然はちみつの商品・販売を行うことを仮定し、現地の関係者や先進国の人たちのそれぞれの立場からどのような取組みや支援内容が考えられるのかについて、皆さんで想像しながら意見をだしてみて下さい。
画像をクリックすると誌面のPDFがダウンロードできます。
- JEEFはバードライフ・インターナショナル東京、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンとの共同事業として、「SATO YAMA UMIプロジェクト」を立ち上げました。
- 海辺の環境教育フォーラムと、その参加者による協働プロジェクト
- 正会員と職員で JEEFの将来を考える
- ごみ箱に捨てる習慣のない国で(ソロモン諸島)
- ブルーフラッグ認証の取得活動を通じた地域づくり
- パート3:開発途上地域(アジア)の地域デザイン第2回 〜自然の恵みの発掘 商品・ブランド化による 地域づくり!〜
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