【事業名】バングラデシュ国スンダルバンスの沿岸流域保全を通じた零細蜂蜜収集人の生計向上プロジェクト(第2年次)
【実施期間】2017年2月3日~2018年2月2日
【実施地】バングラデシュ・クルナ管区 スンダルバンス
【資金提供】日本NGO連携無償資金協力支援事業(外務省 国際協力局 民間援助連携室)
【現地協力団体】バングラデシュ環境開発協会(BEDS)他
天然蜂蜜採取人協同組合の蜂蜜販売組織能力強化
今後組合員が、蜂蜜産業に関わる企業や代理店等と接触するケースの増加が見込まれます。今年からは組合員50世帯(男女50人ずつ)を対象に、経済産業省小規模家内工業協力機構(BSCIC)や郡の協同組合局の職員も参加し、蜂蜜販売へ向けたビジネススキル向上やビジネスプラン作成方法、資金管理、顧客からの信頼獲得等の研修会を開催しました。
この研修にお店での実演プログラムを導入することで、蜂蜜産業に関わる企業・代理店等との対話術、交渉能力や蜂蜜販売の計画策定および事務処理力の向上が達成されました。
蜂蜜採取技能向上のための戦略策定研修会
2017年4月~5月のシーズンへ向け、採取量の増加・品質の向上をより一層図り、また、生態系に配慮した蜂蜜採取の戦略を練るため、組合員(50世帯の男性)を対象に関係者(※1)と次の内容の研修会を開催しました。
- 器具の適正な使用方法の確認、戦略的に蜂蜜採取を行う場所の選定
- 蜂蜜採取人50人同士の蜂蜜収集時における相互連携の改善
- 採取した蜂蜜の保存方法や自然を搾取しない蜂蜜採取方法の確認等
※1:環境林業省森林局、経済産業省小規模家内工業協力機構(BSCIC)や村のリーダー
そして、採取時期には、現地の事業スタッフが組合員に対して、その研修成果を活かした適切な採取を行っているか等について、モニタリングしました。その結果、研修で確認・習得した蜂蜜採取の技能や戦略が活かされ、前年度(2016年: 事業1年目)の協同組合による採取量は、4,278 kg、2017年は4,499 kg と221 kg の増加となり、前年度より5%、事業開始前より10%増加しました。
商品開発の基盤整備と販売へ向けた取組み
この活動では、バングラデシュ国内市場で販売可能な蜂蜜製品のマーケティング開発を行うため、協同組合の事務所・作業場兼倉庫の建設や、蜂蜜回収・販売用の車両1台を購入し、基盤整備を図りました。また、協同組合の代表者10人(5世帯の夫婦)を対象に、ダッカにある蜂蜜製造会社や非木材林産物を販売している店(※2)また、レストラン、ショッピングモール、ホテルへのスタディツアーを開催しました。視察では、組合員が直接店舗で、お客様ヘの蜂蜜商品販売の実演をしたことが、顧客への売り込み、交渉術等を試行する良い機会となりました。
※2:蜂蜜製造会社Honey Bangladesh Company Ltd.非木材林産物の販売店Arong
また、蜂蜜販売の仲介業者、協同組合員や他の天然蜂蜜採取人や郡の協同組合局職員、関係者(※1)がスンダルバンスの天然蜂蜜産業を促進していくためのワークショップを開催し、地域の天然蜂蜜産業を発展させるべく議論を深めました。
さらに、協同組合の女性を対象に、1年目に開発・改善された蜂蜜のろ過・保存・商品開発における技能・技術の修正点等を踏まえ、市場での蜂蜜商品の販売へ向けた戦略策定の研修会を開催しました。
スンダルバンス沿岸流域を中心に住民参加型の植林と環境教育
天然蜂蜜採取人、公立中学校43校の教員、生徒や保護者等の地域住民が参加(※3)し、マングローブの植林活動を通じて、森林保全と森づくりに対する意識向上へ寄与することができました。
※3:参加者は天然蜂蜜採取人50世帯、公立中学校43校の教員43人、生徒6,450人: 150人/学校、保護者6,450人
また、スンダルバンス沿岸流域を保全する重要性や蜂蜜採取との関連性を含めた、中学生を対象にした環境教育の教材(冊子、ポスター、ゲーム)を開発したことで、次世代を担う青年の自然環境保全に対する学習基盤を構築することができました。
今後は、バングラデシュ国内での蜂蜜商品のプロモーション活動(パンフレット、新聞等)や販売(22箇所:市場、ショッピングセンター、レストラン、ホテル、ツーリズムスポット等)を行い、協同組合員の生計向上を目指すこと。そして、中学校で開発された環境教育教材の試行、植林活動を行います。
文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)
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