機関誌「地球のこども」 Child of the earth

マングローブ再生とエビの伝統的加工技術の促進による持続的な自然資源の利用を目指して 2018.02.05

【事業名】バングラデシュ・スンダルバンスの里山保全アクションプラン創出とそのモデルケース構築事業
【実施期間】 2016年10月1日~2018年9月30日
【実施地】バングラデシュ・クルナ管区 スンダルバンス
【資金提供】里山保全支援メカニズム(SDM)
【現地協働団体】バングラデシュ環境開発協会(BEDS)

バングラデシュ・スンダルバンス周辺部で活動する行政、大学、国内外のNGOや住民等により、地域の里山・里海を持続的に保全していく活動を実施しています。今回は、2016年10月から2017年9月までの主な取組みについて報告します。

支援機関のネットワーク構築

2017年4月3日、スンダルバンスで活動する環境林業省等の行政、クルナ大学、NGOが、支援の活動状況や今後の方向性等について意見交換を行うため、クルナ大学のスンダルバンス地域総合研究センターにてフォーラムを開催しました。お互いの活動を、それぞれの機関・団体に所属する関係者が話し合う場は、これまで殆どありませんでした。

今回のフォーラムを通じて、同じ地域や村での重複した活動を避け、効率的に支援するネットワークづくりの構築へ向けて第一歩を踏み出すことができました。今後も、各関係者のイニシアチブの下、定期的にフォーラムや会議を開催し、継続的に情報共有を図っていくことが必要です。

スンダルバンスの里山・里海保全アクションプランの作成

アクションプラン作成に関わる議論を行うため、上記フォーラム関係者とのワークショップを開催しました。作成に当たり、関係者の立場から地域支援という視点で出された主な意見は次の通りです。

  1. 長期的な視点に立ちながら、地域で活動する支援関係者の継続的なネットワークの構築をどのように図っていくか。
  2. 支援関係者による定期的且つ継続的なフォーラムの開催をどのように行うか。
  3. 各関係機関の役割と責任の明確化(活動の内容等)による効率的な支援をどのように行うか。
  4. 地域住民のオーナーシップと自立発展性をどのように促進するか。

スンダルバンスの持続可能なマングローブ保全のためのフォーラム開催。スンダルバンスで活動する環境林業省等の行政(6機関)、クルナ大学、国際NGO(4団体)や国内NGO(11団体)が参加。

 

これらの結果と関係者の協力の下、バングラデシュ環境開発協会(BEDS)とJEEFは、マングローブ林や生物多様性をコミュニティレベルで保全・管理していくためのアクションプランの目次(※)と概要(案)を作成しました。

※アクションプランの目次

  1. スンダルバンスのマングローブ林の特徴
  2. スンダルバンスの生態系保全に関する
  3. バングラデシュ政府の政策や法制度
  4. 行政の取組み
  5.  NGOの活動
  6. 問題と課題
  7. マングローブ林や生物多様性を保全していくための住民、政府やNGO等の今後の方向性
  8. 結論

今後は、関係者との議論を重ね、住民の声をできるだけ多く反映させながら、スンダルバンスにおけるコミュニティベース型の里山・里海保全アクションプランを本格的に作成していきます。

マングローブの植林活動

スンダルバンスと対岸に接する農村部で、漁師とその家族40人程がマングローブ5000本の苗を村の沿岸流域に植林しました。

植林の前には、BEDSが植林することの意義やその維持管理等について事前学習を行いました。植林を通じて、漁師やその家族たちは、マングローブが暴風雨や洪水等の自然災害を軽減することや魚の繁殖場所の提供等、私たちの日常生活に深く関与していることを学びました。

生物多様性保全の研修ワークショップ

BEDSとJEEFは、漁師100世帯を対象とした生物多様性保全の研修ワークショップを4回行いました(2017年9月30日現在)。スンダルバンスの生物多様性を保全することは、漁業の持続的な繁栄と深く関わっていること等、自分たちの里山・里海の保全と暮らしに対する理解を深めました。

なお、えびの伝統的な乾燥技術「Khoti: コティ」については、今後、次世代への継承やマーケテイング等、関係者を交え、その地域性・固有性を考慮にいれながら検討を重ねていきます。

生物多様性保全の研修ワークショップ

文:佐藤秀樹(国際事業部チーフコンサルタント)

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