文:笹谷 秀光(株式会社伊藤園)
なぜ企業SDGsか 持続可能性新時代の羅針盤
企業を取り巻く経営環境は、社会環境の変化が、ICT進化とグローバル化の深化で加速している。特に投資家からも環境・社会・ガバナンス重視のESG投資(※1)の動きが強まっている。
今後日本企業も「ガラパゴス化」しないよう、持続可能な開発目標(SDGs)という、世界の持続可能性の共通言語を使いこなす必要がある。SDGsは、持続可能な社会づくりに向けたこれまでの世界の考えの集大成と位置付けられる。そしてこれは、政府等のみならず企業の役割も重視している。
筆者は31年間の農林水産省での行政経験で、うち3年間は外務省、3年間は環境省に出向した。その後、伊藤園で経営企画部、取締役などを経て現職でCSRを通算7年間担当してきた。
この経験から、2015年は実に「節目」の年であったと実感する。パリ協定、SDGs、コーポレートガバナンスコードというESGすべての面で重要な決定があったESG元年であった。「持続可能性新時代」の幕開けであり、潮目が大きく変わった。
また、SDGsを理解しなければSDGsを踏襲して基準作りが進む東京五輪・パラリンピック後に、世界標準から「置いていかれる」ことになるという危機感を持つべきだ。
※1 環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している
企業を重視・選別して行う投資。
SDGsとビジネス ジャパンSDGsアワード特別賞の伊藤園
SDGsでは「SDGsコンパス」という企業向けの指針も作られている。17の目標はビジネスチャンスとビジネスリスクの両面で企業経営に必須だ。SDGsは企業経営に次の点で役立つ。
- 将来のビジネスチャンスを見極める
- 企業の持続可能性についての価値向上を図る
- ステークホルダーとの関係を強化し、新たな政策方向に沿う
- 社会課題を理解し安定的な市場を得る
- 共通言語として使用し取引先やNGO・NPOなどとの目的の共有をする。
SDGsを活用してバージョンアップした共有価値の創造(CSV)により、社会的課題の解決にイノベーションを生み出す。ジャパンSDGsアワード受賞のサラヤ、住友化学、吉本興業、伊藤園の4社がフロントランナーとされた(※2)。
※2 主相官邸ウェブサイト
特別賞を受賞した伊藤園を見ると、
検証すれば17の目標のすべてに何らかのつながりがある。また、すべての活動で「お客様第一主義」により、関係者との連携を重視していることが特色だ。
伊藤園は「伊藤園グループSDGs推進方針」を定め世界のティーカンパニーを目指して、「茶畑から茶殻まで」一貫して、SDGsの目標12「作る責任使う責任」などに貢献している。企業でバリューチェーン全体にSDGsを紐づけるうえで参考になる。SDGsの責任体制も整え、ホームページでトップページに「伊藤園グループとSDGs」という特設バナーのポータルを設けている。また、「伊藤園統合レポート2017」で全編にわたりSDGsが取り上げられているのでご参照ありたい(伊藤園企業情報ウェブページ)。
SDGs時代の新たな企業戦略
日本企業が世界に遅れることなくSDGsを「自分モノ化」していき、2018年は「SDGs実装元年」とすべき年である。まとめると、次の3点からなる。
- 協働のプラットフォームとして持続可能性の共通言語SDGsを使う=「恊」
- それにより新たな共有価値の創造とリスク管理を強化する=「創」
- そして発信と的確な開示により投資を呼び込む力をつける=「力」
協働で新たな価値を生む「協創力」による競争戦略で、SDGs先進国に向けて対応を強化すべきだ。
なお、これに役立つ、筆者が講師を務める連続講座「ESG対応フォーラム」(企業研究会主催)や、月間総務オンラインなどでの発信があるのでご紹介しておきたい(※4)。
※4 「ESG対応フォーラム」詳しくはこちら https://www.bri.or.jp/esg/
月間総務オンライン『サステナビリティの理論と実践「協創力が稼ぐ時代」』で最新のCSR/CSV/ESG/SDGs関連情報を発信https://www.g-soumu.com/sasaya/
- パートナーシップを重視したSDGsの推進〜目指せ!日本企業のSDGs実装元年〜
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