文:高田 秀重(東京農工大学)
年間20億本のペットボトルが未回収
マイクロプラスチックはもともと、レジ袋、ペットボトルの蓋、使い捨て弁当箱、お菓子のパッケージなどのプラスチックごみです。ゴミ箱が溢れたり、風で飛ばされたりして、地面に落ちているプラゴミが、雨で洗い流され、川を流れて、最後は海に流れ着きます。
例えば、日本では年間200億本程度のペットボトルが消費されていますが、回収率は90%程度なので、年間に20億本程度が未回収です。未回収のものの一部が川や海へ出て、環境を汚染しています。
海を漂ったり、海岸に流れ着いたプラスチックは紫外線や波の力で、ぼろぼろになって、小さな破片、すなわちマイクロプラスチック(5mm以下のプラスチック)になります。マイクロプラスチックは海流等で流されて世界中の海に漂っており、その数は5兆個以上と推定されています。
最近、環境省が行った調査では、日本周辺の海域は世界的にもマイクロプラスチックが多く漂っている海域であることがわかりました。私たちが大量にプラスチックを使っていることがその原因の一つです。また、東南アジアの国々や中国などから、黒潮の流れに乗ってきたものの影響もあると考えられています。
魚貝にたまるマイクロプラスチック
海を漂うプラスチックの一番の問題は、生物が食べてしまうことです。海鳥やウミガメなど大きな海洋生物によるプラスチックの摂食は1970年代から報告されてきました。
マイクロプラスチックは、プランクトンと混ざって海の中を漂っていることから、二枚貝、カニ、小魚などに取り込まれ、現在では世界中の魚貝類から検出されています。
東京湾でもカタクチイワシやムール貝から検出されています。我々人間も、それらの魚貝類の摂食を通して、マイクロプラスチックを食べています。ただ、これらのプラスチックは排泄されてしまうので、マイクロプラスチックが検出されたからといって、魚を食べることを避ける必要はまったくありません。
しかし、これからマイクロプラスチックの量が増えると、それらに含まれる有害な化学物質による影響も懸念されます。有害な化学物質は、もともとプラスチック製品に加えられた添加剤であったり、プラスチックが周りの水の中からくっつけてきた化学物質です。
レジ袋、ペットボトル飲料コンビニ弁当をやめよう
東京湾などの海底の泥(地層)を調べてみると、プラスチックの消費量増加と対応し、マイクロプラスチックが確実に増加していることがわかります。
何も手を打たなければ、世界の海へのプラスチックの流入量は今後20年で10倍になり、今世紀後半には、海の中のプラスチックの量が魚の量を超えるというという予測もあります。プラスチックは大変分解しにくいため、一旦海に流入すると数十年以上残留します。影響がわかってから海への流入を止めても手遅れにな可能性があるため、諸外国では予防的な立場から対策が講じられはじめています。
海洋へのプラスチックの流入を減らすためには、3R(削減、再使用、リサイクル)の促進が鍵であると考えられています。世界的には、3つのRの中でもはじめのR「削減」、使い捨てプラスチック削減の方向で対策が進んでいます。
マイバッグを持ち歩きレジ袋を断る、マイボトルを持ち歩きペットボトルの飲みものを買わないようにする、プラスチック包装の多い商品よりも少ない商品を選ぶ、対面販売を選択しさらにレジ袋は断る、インスタント食品に頼らず食堂で食べる等、個人個人が使い捨てプラスチックを使わないように自分の生活を見直すことが大事です。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。