文:今田 克司(一般財団法人CSOネットワーク)
「環境教育はそもそも成果の可視化が難しい、ましてやインパクトを示せなどとは」という声が聞こえてきます。しかし、社会的課題の解決には、資源(人材や資金等)を呼び込み、営利・非営利を問わずあらゆる主体が公益活動の新たな担い手として評価され、成長できる環境の整備が必要です。
「社会的インパクト評価」とは?
「社会的インパクト評価」について定番の定義があるわけではありません。
私が関わっている社会的インパクト評価イニシアチブ(SIMI)では、「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」を発表し、その中で「社会的インパクト評価とは、社会的インパクト・マネジメントを実践していくための評価のことです」と位置づけました。
では、「社会的インパクト・マネジメント」とはなんでしょうか。ガイドラインで解説していますが、端的には、活動の効果や価値を可視化し、それによってよりよい活動の展開とインパクトの向上に役立てよう、そのために評価を活用しようという事業運営のことです。
SIMIでは、これは、いわゆる事業のPDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)を「インパクト・マネジメント・サイクル」と位置づけて、サイクルを効果的に回していくことによって可能になると考えています(図参照)。
そこで利用される評価は、プログラム評価と言われる事業評価の一連のアプローチで、例えば
- 事業の組み立てや成果に至るロジックを精査したければセオリー評価
- 事業の運営が円滑に行われているかをチェックしたければプロセス評価
- 事業の成果の検証をしたければアウトカム評価
というように、評価をいかにマネジメント改善に役立てようとするかによって力点が変わります。ただ、どの場合でも、エビデンスを事業運営の改変に活用しようという姿勢は変わりません。
「インパクト」への世界的な注目
こういった動きは、世界的な「インパクト」に注目する潮流の中で起きています。また、6月のソーシャル・インパクト・デーの基調講演者、ジョン・ガルガーニ氏が説明したように(※2)、人々の多様な価値観をいかにインパクトの指標設定や測定に反映させることができるか、取り組みが始まっています。
環境教育を含め、これまで「評価しづらい」と思われていた分野に、この流れは大きなチャンスを提供しています。活動の意義や価値をいかにインパクトとして表し、伝えることができるか、考えてみませんか?
※2 Social Impact Day 2018 開催報告
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。