文:香川佳之
感覚を磨くことです。
クレヨンの匂いを嗅ぎながら絵を描いた方が、スマホのお絵かきソフトを駆使するよりも様々なことを感じます。また、自然の中に身を置くと、光、風、音、気温などのわずかな変化に一層感覚は研ぎ澄まされます。
デジタル化が進む時代の中で
世の中はデジタルの時代になりました。私にもSNSを通じ写真の趣味仲間が世界中にいます。また、初めて行く場所への旅行では、出発前にグーグルのストリートビューを見て現地の街並みを頭に入れておけば、到着してすぐに慣れ親しんだ街のように歩けます。
新興国の変革スピードは凄まじく、東南アジアの各国に行くと自動車、自転車のシェアリングビジネスが、日本より遥かに進んでいることに驚かされます。電気自動車を機に新規参入している各国ベンチャー企業の車はデジタル機能満載ですし品質も急速に向上しています。
このようななか、自動車産業に関わる者としてどうすればより魅力的なものづくりができるのかをよく考えます。
日米のものづくりの感覚の違い
日本と欧米のものづくりを比べるとき、日本は「すり合わせ型」、欧米は「レゴブロック型」と言われます。日本のお城の石垣には一つとして同じ形の石はありません。
一方でピラミッドは石を直方体に切り出して造ります。石垣はアナログ的で職人技、ピラミッドはデジタル的で効率的な工法と思います。完成した石垣の稜線を見るにつけ「美しいが職人頼みで非効率」と感じ、ピラミッドは「正確で効率的」と感じます。
つまり、アナログは直感的で本能的、感覚的に物事を掴むことに優れ、デジタルは理論的で標準的、物事をスピードアップして範囲を広げることに適しています。
アナログ的感覚を磨くために
これからの時代、デジタルの恩恵を最大限に享受しつつ、アナログ的感覚を磨くことが一層大切になると思います。つまり多種多様な刺激をたくさん受けることができる環境に身を置くこと。その意味では自然は素晴らしく、そこでのスローで手間がかかるアナログ的な体験を多く積むべきと思っています。
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