文:福元 豪士(NPO法人HUB&LABO Yakushima)
私 は今、「NPO法人 HUB&LABO Yakushima」で子どもたちが「屋久島が大好きだと誇れる」地域づくりに取り組んでいます。
みなさんは生まれ育った故郷のことは好きですか? と言うのも、屋久島の子ども達に「屋久島のこと好き?」と聞くと、「屋久島何にもねぇ。」と返ってくることがほとんどです。
世界が羨む大自然も島の人にとっては当たり前。当たり前のものに人は興味を持ちづらいですよね。実際に屋久島の子どもたちは就職を機に9割が島を離れて戻ってきません。僕も高校・大学・社会人と島を離れました。
子どもたちに自然を楽しめる原体験を
僕が屋久島に帰ってきたのは、自然の中で遊ぶことの楽しさを知っていたからです。どんなにこの島の魅力を知っていても、自然の遊び方を知らなければ島を楽しめない。まずは自然の中で遊ぶことの楽しさを伝える場が必要だ! と平成27年に未就学児の親子を対象にした「子育てサークルOYAKOLABO」を立ち上げました。
親も子も安心して遊びながら子育てができる空間は、本当に幸せで豊かな時間。森の中でアートや自然あそび、キャンプなど月一回の親子の自然体験の場として、屋久島ならではの子育て支援をしています。
屋久島の未来環境を考える次のステージへ
屋久島の子どもたちに原体験を提供する中で、「屋久島自体が無くなってしまったら、遊ぶこともできないのではないか」と不安を感じる瞬間がありました。
全国の地方で地域課題が取り上げられる中、この島も課題が山積みです。人生100年時代。子どもたちに未来を託すだけでなく、子どもたちが生きる100年先の屋久島も整えていく必要を強く感じました。
そこで始めたのが未来系イベント。この島の未来を考える1日として、屋久島未来ミーティングを開催しています。「屋久島の未来を良くしたい」を合言葉にこれまでに3回開催し、合計で200名ほどの方にご参加いただきました。
コミュニティの壁
実は、住民の半分が移住者と言われるほど、移住者が多い屋久島。それぞれが自分の理想の暮らしを作っています。だからこそ、移住者と島民の壁ができやすいのが現状です。屋久島未来ミーティングでは、屋久島の未来と言うキーワードで島民、移住者のコミュニティを超えた話し合いを行っています。
島出身の僕だからできること
島出身の若者が活動しているだけで、島民、移住者にも無条件で応援してもらえます。島出身の若者が地域づくりに取り組んでいると本気だと思ってもらえるからだと思います。ミーティング中に参加者から「もっと屋久島が好きになった」と言われた嬉しさが今でも忘れられません。
僕は、この島を一人ひとりが豊かさを感じられる世界にしたいと思っています。僕にとって豊かさとは「みんな違ってみんないい」が当たり前に感じられること。一人ひとりの中に豊かさがあり、そしてそれぞれの形があります。その豊かさをつなぐ人でありたいと思っています。
私の大切にしていること
地域に根差す定住
僕たち家族が屋久島に定住できた理由。それは、地域コミュニティと共に子育てや暮らしをつくってきたからだと思います。
正直田舎は忙しいです。暮らしを自分で作ることができるからこそ、やることがいっぱいです。周りからの期待にプレッシャーを感じることも多々あります。必要とされている心地よさも感じながら、苦しさも感じるのが正直なところです。
その中で選んだ選択肢を正解にするのは自分。だからこそ暮らしを作っていく楽しさがあり、自分が感じる豊かな世界を表現しやすいと思っています。それが自分を生きるってことなんじゃないでしょうか。その証拠に、最近屋久島では若者や子どもが増えてきています。豊かさを感じられる暮らし。田舎への定住は心地よいです。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。