機関誌「地球のこども」 Child of the earth

考えるっておもしろいかも!? パート4:第9回 子どもの学びをまん中にした 関わり方 2019.08.21

文:鴨川光(ジャパンGEMSセンター研究員)

Q 途中で活動から外れてしまった子にどう対応したらよいですか?

どこからでも探究は生まれる

小さい子とワークショップをしていると、途中で活動から抜けたまま、なかなか帰ってこられない子がいます。初めての場で緊張してしまったり、上手くいかなくて悲しくなってしまったり、お母さんに甘えたくなったり、理由はさまざま。スタッフや保護者がどこまで介入してよいか毎回迷う場面です。

先日、『タマゴ タマゴ』のワークショップをしていた時のこと。みんなでタマゴの絵を描くパートが始まった途端、4歳の男の子Tくんがお母さんの方にふっと行ったきり膝の上に陣取って戻ってこなくなりました。お母さんがなんとか活動に戻そうと声をかけるのですが、やりたくないの一点張り。そこで、次は僕が声をかけてみました。

かも 今は気持ちが乗らないみたいだね。Tくんは何をしたら楽しくなれる?

Tくん 九州のおじいちゃんのところに行きたい…。

お母さん (苦笑しながら)大好きなプラレールがたくさんあるんです。

かも そういえば、始まる前も電車のおもちゃで遊んでたね。(もしかして動くものが好き?)プラレールはここにはないけど、『コロガール』ってのをつくってあげるよ。

Tくん なにそれ?

かも この木でできたタマゴを坂道から転がすっていう遊びなんだけど、転がっていくと思う場所に待ち構えてて。

そう言って、二人でタマゴ転がし遊びを始めました。最初はなんとなくで付き合っていてくれたTくんも、何回か見ているうちに「僕も転がしてみたい!」と一人で黙々と探究を始めました。さらにしばらくすると、「絵を描くのもやる」と言って活動に戻って行きました。

気持ちを切らないことが最優先

外れた子に対する関わり方で主に意識するのは、「場所の自由度」と「活動の自由度」の二つの自由度ではないでしょうか(※表1)。

 

先述した例では、全体で行なっているタマゴの絵を描くという活動はTくんの気持ちに合いませんでしたが、タマゴを転がすという個別に提供された活動をしていた4のパターンに移行したので、気持ちが途切れることはありませんでした。

そうは言っても、みんなと同じ場所にいることや、別の場所にいてもいいからみんなと同じことやろうね、という自分が思う型(”良い学び“の状態像)にはめようとする1~3のような関わり方をついついしたくなってしまいますよね。

そんな時は、何のために子どもたちがその場にいるのか、胸に手を当ててみましょう。大人がやりたいことに付き合わせるためではないはずです。

子どもの学びをまん中に考えた時、最優先は学びに向かっているその子の気持ちを切らないことです。一度立ち止まってから再び走り出すことが苦しいように、一度冷めてしまった気持ちを温め直すことは本人にとってもファシリテーターにとっても難しいもの。

しかし、本来の活動からはズレてしまったとしても、何かしらの探究を続けていればその子の学びは続き、機を見て全体の活動にも復帰しやすくなります。

授業でもワークショップでも、一人ひとり興味やモチベーションが違う子どもたちを相手にしているので、どうしても活動にのれない子は出てきます。その時は急がば回れ、ぱっと見の「どこにいる」「何をしている」にこだわらず、それぞれの子がしっかり学びに向き合えるよう、気持ちに焦点を当て働きかけてみてはいかがでしょうか?

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