2019年8月30日~9月4日の期間に渡り、バングラデシュの里山農業保全活動の現場(ダコップ郡)へ行き、本事業の受益者である40世帯の農業者と意見交換や議論を行ってきました。ダコップ郡は、同国で唯一のユネスコ世界自然遺産であり、ラムサール条約にも登録されているシュンドルボン(The Sundarbans)と対岸に位置しています。
バングラデシュそして当該地域に共通した一番の課題は、経済的貧困をどのように克服していくのかということです。今回も、ローカル農作物の品種の栽培・保存・利用がどのように現金収入の向上につながるのかということが課題の一つともなりました。
ハイブリット品種と比べると、ローカル品種は有機的に栽培でき、化学肥料や農薬の使用量は減らせます。しかし、農作物の生産量は期待できないため、農業者の多くはローカル品種の栽培をほとんど行っていないのが現状です。
ローカル品種は有機的栽培が可能で私たちの健康にもやさしい農産物を提供してくれます。また、ローカル品種栽培による観光農園としての利用や地域固有であるという価値を活かした料理を、同地域を訪れる旅行者へ提供するアグロ・ツーリズム等に発展させていくこともできるでしょう。在来種の価値をあらためて見直すことで農業者の環境保全型農業に対する意識や技術の向上へつながります。そして、付加価値のあるローカル野菜等の商品化や観光としての利用により、農業者の現金収入向上の一つになる可能性があります。
引き続き農業者や関係機関の県・郡の農業局、大学の農業専門家や村役場等ともに、在来品種の栽培・保存・利用について深く議論を重ね、地域の環境保全と農業者の経済的貧困の軽減へ向けた方策を模索していきたいと思っています。
▼事業計画の詳細は、下記のウエブサイトをご覧ください。
バングラデシュ・シュンドルボン地域におけるコミュニティベース型シードバンクの設立を通じた里山農業保全活動
文責: 江戸川大学 社会学部 現代社会学科 講師/
日本環境教育フォーラム 客員上席研究員 佐藤 秀樹