機関誌「地球のこども」 Child of the earth

食品ロスに新たな価値を 〜リサイクル・ループ(循環型社会)の形成に向けて〜 2020.02.21

文:高橋 巧一((株)日本フードエコロジーセンター)

余った食品はどこへ?

皆さんは売れ残った食品、賞味期限が切れた食品がどこへ行っているのか、ご存知ですか?

現在、各自治体が運営する焼却炉に持ち込まれる廃棄物のうち、4~5割が食品です。ご存知のように紙やビンカン等は、ほとんどがリサイクルされています。一番リサイクルが遅れてるのが、食品廃棄物なのです。

それも一般家庭のものだけでなく、食品スーパー、百貨店、外食産業等、皆さんが普段利用している食品関連企業から排出される食品廃棄物も自治体の焼却炉に持ち込まれているのです。

当然、自治体の焼却炉で燃やすということは皆さんの税金が使われているということ。年間1兆9,495億円(2015年度)がごみ処理経費として計上されていることから、私たちの税金の1兆円近くが、食べ物を燃やすために使われていることになります。このことをほとんどの方は知らないのではないでしょうか?

液体状の飼料でCO2削減

リキッド発酵飼料の給餌風景

リキッド発酵飼料の給餌風景

株式会社日本フードエコロジーセンター(以下J.FEC)は、食品循環資源(食品廃棄物のうち、再利用可能なもの)を、破砕、殺菌、発酵処理し、リキッド発酵飼料(エコフィード)を製造しています。もともと、食品循環資源は水分含有量が多いため、腐敗や臭気の発生しやすく、乾燥化させることがリサイクルの前提条件とされてきました。

しかし、この乾燥化の過程が、膨大な熱エネルギーを消費し、コストアップの要因でした。J.FECは、殺菌処理の際に熱処理はおこなうものの、必要以上に熱エネルギーを使わない液体状の飼料を製造することで、コストダウンとCO2排出量の大幅な削減を実現しました。

現在180以上の食品関連事業所から一日あたり35トン以上の食品循環資源を受け入れ、エコフィードを製造し、年間1万2千トン以上のリサイクルを行っています。

排出業者でブランド商品として販売している『優とん』

リサイクル・ループの構築

J.FECは単に飼料化だけに取り組んでいるわけではありません。製造したリキッド発酵飼料を用いて肥育した豚肉を、排出事業者である食品関連企業で購入していただき、ブランド商品として食品関連企業が販売していくというリサイクル・ループの構築のお手伝いもしています。

例えば、小田急電鉄を中心とする小田急グループでは、「地球に優しい、人に優しい、味が優しい」というコンセプトでそのネーミングを「優とん」と銘うち、ブランド名と販売コンセプトを統一することで、グループの相乗効果を図り、新たな豚肉ブランドを浸透させることを目指したキャンペーンを電車内のつり革広告等で展開しました。

食品リサイクル・ループの形成

私たち消費者にできること

世界的に食品ロス問題が叫ばれ、国連が進めているSDGsでも2030年までに食品ロスを半減させる目標が採択された中、食品リサイクルは一過性のものではなく、継続性の高い仕組みが求められています。

私たちも一人ひとりが自分自身の問題として認識し、その解決に向けて一歩ずつ向かっていくことが大切です。
そのためには、まず消費行動を変えることも大切です。価格や見栄えだけで野菜を買うのではなく、生産地や生産過程を知った上で購買すること、お店側に消費者視点をもっと伝えていくこと。また、子どもたちに食文化の大切さを伝えていくこと等は身近に私たちができることではないでしょうか。

消費者一人の力では何もできないのではなく、一人ひとりができる行動を少しずつ取り組むことで、社会は変わっていくものだと思います。循環型社会づくりへ向けて、皆様の行動を期待しています。

高橋 巧一(たかはし こういち)

1992年日本大学生物資源科学部獣医学科卒。同年獣医師免許取得。経営コンサルティング会社、環境ベンチャー会社、(株)小田急ビルサービス 環境事業部顧問を経て、現在(株)日本フードエコロジーセンター代表取締役。他に一般社団法人 全国食品リサイクル連合会 会長等。

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