文:中野 民夫(国立大学法人東京工業大学)
輪になって座り歌うことです。
輪になって座ると
参加体験型のワークショップや、対話を育む場のファシリテーションに長らく関わってきた。人が集うとき、「輪になって座る」ことを大切にしている。誰もがかけがえのない一部であることが体感されるし、お互いの顔が見えると、やりとりも自然に起きる。
2013年の清里ミーティングでJEEF理事長の川嶋直さんが創案した「えんたくん」も、輪になって語り合う場を自然につくる、優れた対話促進ツールだ。勤務先の東工大でも、人としての教養を育むリベラルアーツ教育を中心に、全学で活用されている。
僕なりのチャンティングサークル
輪になって歌う「チャンティングサークル」という活動を続けているケビン・ジェームスという人がいる。バリ島でのヨガのリトリートで出会ったとき、世界各地のマントラ(真言)とシンプルなメロディを、ミュージシャンが舞台の上でなく輪の中に座って一緒に歌った。上下関係ではないワークショップ的なそのスタイルにいたく感動した。
繰り返し歌う中で、心が穏やかになり一体感も生まれる。こういう音楽の楽しみ方っていいな! と感じた。
ケビンの影響もあり、55歳からギターを習い、57歳からオリジナルソングが生まれ始めた。CDも創り、最近は授業やワークショップでも歌っている。「上手いから聴いて!」ではなく、「よかったら一緒に歌いませんか?」というスタンスで、僕なりのチャンティングサークルを実践している。
さらに、歌詞をもとに話題提供し、例えば「忙しさにどう対処してる?」「死生観は?」などをテーマに、参加者が少人数で対話する「ライブ&ダイアローグ」という形を探究している。
自分とつながり直し、思い出す場
人と人、人と自然、人と自分自身、人と社会、様々な分断をつなぎ直す場を創ろうと、環境教育を含め様々な活動をしてきた。
今は、輪になって座り、ともに歌うことで、忙しい日常から少し立ち止まり、マインドフルに自分自身や他者とつながり直し、みんな「地球のこどもたち」であることを思い出す。そんな場を創ることを大切にしている。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。