【実施期間】2013年9月17日(火)〜10月2日(水)
【開催地】ブータン ポブジカ村
【主催】独立行政法人国際協力機構(JEEF受託)
【協働】王立自然保護協会
ブータン・ポブジカのエコツーリズム開発事業もいよいよ大詰めを迎えました。5月、6月の2カ月でホームステイ、ローカルガイドの研修が実施され、ホームステイは19世帯、ローカルガイドは9名が無事に研修を終えました。
それぞれの研修を担当していた日本人スタッフからは、「とても良い研修だったよ」と成果を聞いていましたが、9月の渡航の最大の目的は、果たして旅行客を泊められるような状態になったのかどうかを確認し、ブータン国内の旅行会社への宣伝戦略を立ててくることでした。
研修の成果を確認するにはホームステイをすることが一番。ブータン側に手配をお願いし、ポブジカへの旅行会社誘致のための広報・宣伝活動に専門的なご意見を戴くべく、風の旅行社の方と一緒に、研修を修了した一軒のお宅で、ホームステイさせてもらいました。
訪れるたびレベルアップ!ポブジカ式おもてなし
私たちの到着時間は夕方5時過ぎとちょっと遅くなったのですが、ホームステイ先のご家族は到着と同時に玄関まで出迎えてくれました。
まず驚いたのは、家の中がとてもきれいになったことです。農家が多く、舗装路の少ないポブジカでは、家の中に泥や砂が上がっていることが少なくないのですが、家の中は清掃が行き届き、靴下の裏にほとんどゴミがつきません。寝室も清潔感があり、マットレスに毛布を敷いてくれていて快適でした。食事も辛さを抑えてあり、これなら日本人旅行者でも大丈夫! と同行中の風の旅行社の方とうなずき合いました。
私たちがポブジカを去った9月22日から、エイチ・アイ・エスのスタディ・ツアーの参加者たちがポブジカに二泊三日で滞在されました。ご帰国前にティンプー市内で会ってご意見を伺う機会がありましたが、快適に滞在できたという意見があった一方、「食事が終わっていないのに、上からご飯をよそおうとする」、「お酒を注ぎたそうとする」など、課題も浮き彫りになりました。ポブジカに限ったことではないのですが、ブータンでは、飲み終わっていないコーヒーや紅茶に注ぎ足すことや、食べ終わっていない上からご飯を盛ることは普通に行われます。早速、一緒に仕事をしている王立自然保護協会のチョキさんを通じて、旅行者への対応の注意点として村の人たちに連絡してもらうよう伝えました。
旅行者への理解深まる意見交換会
一方、プロモーション戦略について、ホームステイした翌日に村のエコツアー運営委員会のメンバーと意見交換を行いました。当日は近くの名刹で、年に1度の仏画の御開帳が行われる日で、村の人たちにとっては大切なお祭りの日だったにも関わらず、30名ほどの関係者が出席してくれました。風の旅行社の方から、「旅行者とのコミュニケーションが大切」、「ローカルガイドは、ナショナルガイドが案内しないような地元の人しか知らないような話をして欲しい」などのアドバイスを戴きましたが、驚いたことに、5〜6月の研修を通じ、意外にも多く出席者たちがこのことをよく理解していました。また、「ブータンに来る人の多くは女性であるから、女性向けの配慮を工夫して欲しい」、「ホームステイでは家庭体験が求められるのだから、土産物は売らない方が良い」という意見には、「近所のおばさんと、せっかくだからお土産物も置こうと話していたけど、良いことを聞いた」と出席者の中からコメントがありました。
若手リーダーの活躍
当日の会議はこれまでのように王立自然保護協会のチョキさんが仕切るのではなく、新しくできたポブジカ観光運営委員会の代表となったゲルチェンさんが進行役を務めました。2年前の8月に初めて会った時には、一生懸命だけど、どこか頼りない雰囲気のあった彼はガイド研修等を通じ、若いながらも自覚を持ったグループの代表者となっており、「エイチ・アイ・エスのツアーの準備もそつなくこなしてくれた」とブータン側で同ツアーの受入を行っていた旅行会社の方が教えてくれました。
今年末からは、いよいよブータン国内の旅行会社への宣伝活動が本格化します。12月にはブータン国内の旅行会社向けの説明会が、2〜3月には国内旅行会社を対象とした視察旅行が計画されています。風の旅行社の方も、帰国後にツアーを作れないか検討してみるとおっしゃってくださいました。来年の春には、ポブジカのホームステイを目玉にしたブータンへのツアーが複数の旅行会社から売り出されるようになることを期待しつつ、帰国しました。
文責:田儀耕司(JEEF職員)
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