「山の天気は変わりやすい」と昔から言われます。確かに天気予報が当てにならないこともしばしば。それでも山に出かける前は必ず「天気予報」を見ます。お天気マークや週間天気予報にも一喜一憂です。
しかしこれらは「平地の天気予報」だと知っておくべきでしょう。こういった天気予報を当てにするなら、山脈の多くは県境にあるので山頂がある都道府県のみならず、近県を総体的に眺めなくてはいけません。天気で山登りの印象はガラリと変わります。悪天は命に関わるリスクを生むことにもなります。本来なら最低でも1週間前から天気図をチェックして動向を自分で予測するべきなのですが、ついつい天気予報を見るのは前日なんてことも少なくありません。
どのような天気で当日どう行動するか、山登りでいちばん最初にぶち当たる判断の壁です。山域やコースによっては雨のほうが味わいがあっていいなんてこともあります。「コース」「天気」「季節」「持ち物」…などなど、同じ日が一度たりともないように、山登りは登るだけでなく多角的に自然に対する理解を深めることが大切なのです。
私が長野県白馬村の山荘でアルバイトしていたときのこと。もちろんお客さんのためにも自分たちの作業の予定を組むにも天気予報は欠かさず確認していました。しかしやっぱり天気予報は当てにはなりません。山荘のおばさんがふと山を見て「ああ、これから崩れるね」なんて呟きが不思議といちばん当たるのです。何年もその場所で積み重ねた経験からくるおばさんの天気予報に私は憧れを抱きました。
そんなあるとき山岳ガイドさんに「天気は山域(地形)で決まったクセがある」と聞きます。私はせめて自分が毎日過ごしている山域のクセを見つけたいと思い、ノートに新聞の天気図を切り貼りし、朝昼晩の気温と気圧、風向きと風速を記録していきました。案外こういう作業が好きなので盛り上がりましたが、天気に関してはズブズブの素人。正直、書き写すだけで満足してしまうところもありました。しかし意識して空を眺めることを続けているうちに変化に敏感になっていきました。「今日は先々週の天気と近いかな…?」とか「午後になって風向きが変わったということは…?」など気づきはあるものの、残念なことにそれが何を示しているのかまでつきとめることが出来ませんでした。そしてそんな私の隣におばさんがやってきて言うのです。「あ!明日は晴れるね!」。そして当たるのです。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。