実りの秋。秋の絵本がたわわに実っています。
こんにちは。ちえの木の実です。
街では、クリスマスツリーやイルミネーションがきらきらしていて、あちらこちらからクリスマスキャロルが聴こえてきて…。「まだ11月ですよ!」と言いたいのは私だけでしょうか。お店は今、いちばん「ちえの木の実らしい色」かもしれません。どんぐりにまつぼっくり、紅葉に落ち葉の絵本が、なんとも居心地よさそうに並んでいます。冬支度をする、りすをはじめとした動物たちの姿は、何度見ても愛らしくて笑みがこぼれます。クリスマスの色に変わるまで、あとほんの少し、日本の秋を愛でませんか?
11月の本棚は・・・
コラムの初回でもご紹介したように、店名「ちえの木の実」の「木の実」は本を表しています。お散歩中に、落ちている木の実を拾う子どもたちの姿を見つけては、そのポケットいっぱいのどんぐりのように、本棚からたくさんの絵本を手に取ってほしいと願ってしまうものです。11月は「実りの秋」を感じていただけるような棚づくりをしています。
絵本が教えてくれる秋、そして次の季節。
『もみじのてがみ』(小峰書店)
「てがみだよ てがみだよ もみじのてがみだよ」くちばしにまっ赤なもみじの葉(手紙)をくわえて、1羽のつぐみが飛んできます。そのお知らせは、ねずみに、りすに、と伝えられるのですが、なかなかもみじの木は見つかりません。「赤」を手がかりに、動物たちは森のあちこちをかけまわります。この絵本を読むと、ちいさい春(きいろい花)のにおいをたよりに、冬眠から目を覚ました動物たちが走る『はなをくんくん』(福音館書店)を思い出します。こちらは、冬眠の季節に向かって、赤い色を探して走る…。きのこも、つばきも、がまずみも、秋の赤。燃えるような色のもみじに出会うラストは、圧巻です。
『たねのずかん』(福音館書店)
外を歩いていると、ふと洋服にわた毛がついていたり。木の下を歩いていると、ちいさな種のようなものがくるくると落ちてきたり。気づかぬうちに、人や動物、風や水が運んでいるこの小さいものの正体は、そう、種です。この絵本は、種のページと、植物(花や実)のページが交互に紹介されていて、なんの種なのかが一目瞭然。しかも、何によって運ばれるかが巻末に記されていて、それはもう驚きの連続です。実がはじけて運ばれるもの、鳥(のふん)が運ぶもの、風やアリが運ぶもの…。命をつなぐ、という必死さがひしひしと伝わってきます。科学の絵本シリーズの「みるずかん・かんじるずかん」というだけあって、植物に対する深い愛情が込められた文と絵で語りかけてくれています。
『いっぽんの木のそばで』(BL出版)
夏のある日、土のなかに埋められた1つのどんぐり。季節が何度も変わり、あたりの暮らしがどんどん変わっていっても、どんぐりから育ったオークの木は、どっしりと立っていました。200年の歳月がたち、変わっていったのは、まわりの景色だけ。人々の暮らしだけ。でも、幾度となくくぐり抜けた嵐にも、とうとう耐えられなくなって…。大きな1本の木のはじまりは1つのちいさなどんぐりだったこと、そして、大きな姿は消えても、また新しい命のはじまりへとつながること。いつも人々は、木から教わることのほうが多いのですね。そのことを知った瞬間に、木の実や木、そして自然への目の向け方が少し変わるかもしれません。
ちえの木の実は、どこか木の香りがする、とよく言われます。本=紙も、元をたどれば木ですからね。木の香りに包まれて、木の実=絵本をたくさん手に取ってほしいな、と思います。この季節はこの季節の、次の季節は次の季節の、今にぴったりと合った絵本を、どうぞお楽しみください。