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市民のための環境公開講座パート1第二回「宇宙から地球の雨を測る」レポート 2015.07.27

はじめまして!2015年度CSOラーニング生の大塚春奈と申します。

私用によりスタート時期が遅くなりましたが、今回の市民講座への参加をもちましてインターン活動を本格的に開始しました。

自己紹介は追ってしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

 

さて、7/21(火)に市民講座パート1「自然の魅力」の第二回「宇宙から地球の雨を測る」が開催されました。

宇宙航空研究機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)より沖理子様にお越しいただきました。

 

今回の講座では、地球規模での降雨の観測に衛星を用いる方法論や利点、気象観測における将来の展望などについてのお話を伺いました。

気象観測の舞台の第一線でご活躍されている沖先生のお話は、衛星という最先端の技術と自然のメカニズムが組み合わさっていて、とても興味深いものでした。

 

<講演の感想>

講演の中では衛星による降水観測の専門的な仕組みやデータが多く紹介されており、難しい内容も多かったのが印象に残っています。先生がお話ししてくださったことを100%理解している自信はないのですが、最新の衛星技術により得られた全世界における降水量のデータの数々は、とても参考になりました。

 

講演中に先生が、このような研究はある明確な目標のためだけにやっているわけでなく、あくまでも科学者としての好奇心が最たるモチベーションとなっているのだということをおっしゃっていました。確かに、本講演で先生は17年分の降水量の変遷を紹介なさっていたものの、このデータに対して求めていたものやデータからいえることについては言及しておらず、「現段階で得られたデータだけでは統計学的に不十分」ともおっしゃっていました。

環境問題は今起きている目先の問題を付け焼刃的に解決するだけでなく、将来世代にも目を向けることが重要となります。先生のお話から、今はまだどう応用されるか未知数の科学技術も、将来的には環境の問題に大きく貢献しうるものであり、たとえその原動力が単なる好奇心だったとしても、大きな価値があるものだと考えさせられました。

 

特に降水は、人々の生活や生命に大きく影響します誰もが関心を持つ天気予報がより確実になったり、台風や洪水を予測できたりするだけでも、個人として嬉しいものです。さらに降水は地球の水や大気の循環に密接に関係しているため、降水のメカニズムや変遷の解明は、間違いなく地球レベルの環境問題に取り組む大きな手助けとなるのだろうと感じさせられました。

講演全体を通じて、世界における降水観測の重要性や、将来への可能性について考えさせられました。

 

今回の講座の概要は以下のようになります。ご参考までに、ぜひご一読ください。

 

<講演内容>

自然災害の3分の2は風・水災害!

80~90年代の世界全体での自然災害による被害のうち、死者数・経済被害ともにその60%以上が風水害(洪水、台風など)によるものだと明らかにされています。

またここ40年間において、世界全体で水災害(主に洪水)による被害件数が増加していますが、反対に雨が全く降らなければ干ばつのような新たな被害を生むものです。

このように、雨がどの程度降るか、すなわち降水の程度は人々の生活や命に大きくかかわるものだということがわかります。

 

衛星による降水量の観測

ここで重要となってくるのが、降水の観測です。

従来の地上での雨量計やレーダーにおける観測は、陸地の特定の地域に限られていましたが、近年では衛星を用いて宇宙から包括的に降水量を観測すること可能になりました。降水量は時間的・空間的変化が大きく地上からの観測が難しいことも、衛星を用いる理由の一つです。ここで降水量は、天気や大気の状態を把握するのに重要なデータとなります。

ちなみに、人工衛星の中でも有名な「ひまわり」は主に雲の様子を測りますが、雲の様子からの雨量の推定は、分析者の経験に頼る部分があるためばらつきが生じます。

 

熱帯降雨観測衛星(TRMM)とは

日本の開発した衛星では、熱帯降雨観測衛星(TRMM)が大きな進歩を見せました。TRMMは、1997年11月に打ち上げられて以来17年間、レーダーによる観測を続けています。またTRMMは可視・赤外放射計、降雨レーダー、マイクロ派放射計すべての機能をもっており、それぞれ雲の高さ、雨粒の鉛直・水平分布を同時に観測することができるのです。TRMMによる17年間の平均降水分布や降水量変動のグラフが作成されており、さらに将来何十年分のデータをとり続ければ、気象観測に大きく貢献するだろうといわれています

 

全球降水観測(GPM)計画

これは、一機の主衛星と複数機の複衛星を用いて地球全体の降水量を一気に観測する手法であり、TRMMに代替するものとして実現されました。これにより、全世界の降水の様子にほぼリアルタイムでアクセスすることが可能になりました。また複数の衛星による様々な種類のデータを組み合わせることで、降水の観測がより信頼できるようになったといわれており、現在アジア諸国を中心にその利用が拡大しています。

 

おわりに

衛星による降水観測の利点は主に、三次元情報の獲得解像度の改善、海陸均一の三点だといわれています。TRMMを始めとした降水観測衛星の登場により、気象観測の分野が大きく進歩しました。今後も長期的なスパンで降水を観測し続けることで、地球温暖化への対策や気候変動の予測がより発展すると期待されています。

 

<次回の講演>

次回の市民講座は7/28(火)、山井太先生による「自然にふれて取り戻す人間の基本」です!

 

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