こんにちは、CSOラーニング生の大塚春奈です!
市民のための環境公開講座パート2「食・農・暮らし」が、10/27(火)をもって終了しました。
身近な食や農業・漁業がテーマであったこともあり、たくさんのお客様にお越しいただきました!
第1回「クロマグロの完全養殖と養殖業の課題」では、近畿大学水産研究所宮下盛氏よりお話をいただきました。
様々な研究機関が撤退する中、なぜ近畿大学だけが世界初のクロマグロの完全養殖に成功したのか、その成功を支えた技術とは何か、そしてクロマグロ養殖から浮き彫りにされる日本の養殖業・漁業の課題について、専門的な内容を交えながらの講座となりました!
最も感銘を受けたのは、クロマグロ養殖が近畿大学の方々の様々な努力と工夫によって可能になったということです。
マグロの養殖といっても、ただ生簀に海水を入れ、エサを与えて世話をすればよいわけではありません。
そもそもマグロは、生簀で飼育することは不可能な魚だと言われていました。
同大水産研究所でも、最初は稚魚の輸送方法や生簀のサイズなどを試行錯誤し、新魚の育成から始めたといいます。しかしようやく稚魚が成長するようになっても、生簀で産卵された卵からの飼育は10年以上にわたり叶わなかったそうです。
その後沢山の研究と改良を重ね、稚魚の飼育開始から32年後、ついに完全養殖を達成したといいます。
クロマグロ養殖という、たった一つの目的のために費やされた時間、努力に感銘を受けるとともに、その重要性がより認知されるべき国内ブランドとしての養殖業にも、もっと目を向けてみるべきなのだと感じました。
第2回「食・農・環境をつなげ、人を育てる有機園芸~教育農業の四季~」では、講師に恵泉女学園大学教授 澤登早苗氏をお招きしました!
同大学で必修の授業「生活園芸I」や子育て支援センターでの「親子有機野菜教室」の紹介から、私たちがいかに普段口にするものの本当の姿を見て、考えることをしなくなっているか、考えさせられました。
本講座は、「身近な野菜の本当の姿を知っていますか?」という問いから始まりました。ジャガイモ・サトイモ・サツマイモはどこにできるか、レタスの花を見たことがあるか、落花生はどこにできるか・・
どれも身近な野菜であるにも関わらず、それがどうできているのかは考えたことすらなかったことに気付かされます。都市部だけでなく、農村部の人にも当てはまるそうです。
これは近年の農業の効率化による弊害とされています。量産された野菜や果物をスーパーやコンビニで簡単に買うことができ、食べ物やそれにまつわる「いのち」の循環が見えにくくなった社会を生きているのだ感じさせられました。
このような背景を踏まえて、野菜を一から育てる「生活園芸」や子育て支援としての「親子有機野菜教室」のようなプログラムは、「自然」や「循環」、「共生」を学ぶ上で注目されるべきもの、現代を生きる私たちが本当に必要としているものの一つなのだと思いました。
最終回は、話題のガーデンデザイナー、ポール・スミザー氏による「自然の韻(うた)が聞こえる庭」です!
来日してから25年間、山梨県八ヶ岳でガーデンデザイナーとして活動していた経験と、自然を育てることへの情熱がひしひしと伝わる講演でした!
またジョークもたくさん交え、聞く人誰もを楽しませてくれるような、素敵なお話でした。
植物も人間と同じように、それぞれに合った生きやすい環境や居場所があるといいます。
化学肥料なども一切使わず、植物の力を最大限に生かした自身の庭園づくりのスタイルを紹介していく中で、ありのままの「自然」を守るとはどういうことなのか、考えるきっかけになりました。
本講座で印象的だったのは、スミザー氏の日本の植物への情熱と、豊富な経験に基づくたくさんの知識です。
中でも「皆から好まれるような自然の姿を作るために、たった数種類の植物だけ植えてそれを維持するのは間違い。植物を好んで寄ってくる虫や鳥も含めて、たくさんの植物・生物が共生している状態こそ本当に愛される自然の姿」という言葉が心に残りました。
一個人として「環境」や「自然」を考える中で、本当に守らなければいけない「環境」とは何なのかという疑問を抱えている今だからこそ、「生物の力からなされる共生が、本当の自然の姿」という言葉が印象に残ったのだと思います。
同時に庭づくりという、一見本来の自然とは対照的な分野から、自然に対する価値観が見えてくることへの面白味も感じました。
パート2の講座概要に興味のある方は、ぜひ市民のための環境公開講座ウェブページをご覧ください。
パート3「持続可能な社会の実現に向けて」第1回は、11/17(火)18:30より新宿会場にて開催となります!
講師は元水産省で漁師の上田勝彦氏です。
募集はまだ上記のウェブページで行っておりますので、興味のある方はぜひお申込みください。
次回からいよいよ最終パートです!お楽しみに!