バングラデシュ・シュンドルボン(The Sundarbans)における農畜林水産部門の6次産業化による零細農村生産者の生計向上プロジェクト
1.事業の背景
ユネスコの世界自然遺産とラムサール条約サイトに登録されているシュンドルボン(The Sundarbans)の周辺で暮らす農畜林漁業者の月収(世帯当たり)は、約2,000タカ~7,000タカ(≒2,600~9,000円)が平均であり、家族が経済的に安定した営みを送るには、依然として貧しい地域の一つです。同地域の大きな課題の一つは経済的な貧困ですが、それを阻害している農畜林水産業の主な要因としては下記が考えられます。
- 第一次産業の生産者による食事の煮炊き用に使用するためのマングローブ林の不法な伐採や、農薬の多用による土壌・河川の汚染等が進み、自然資源の適切な利用や減農薬等の環境保全型農業が行われていないため、地域の生物多様性が損なわれている。
- 衛生面に配慮した家畜飼育が十分に行われていないことや、畜産物の生産品質が均一ではないこと。
- 非木材林産物の商品化や販売が、十分に行われていない。
- 一次産業の生産者の多くは、農畜林水産物を仲介業者に引き渡す方法で販売しているが、その際、公平な価格で取り引きさせてもらえない。
- 一次産業の生産者は、独自のマーケティング・チャンネルを持っている人が少ない。
- 一次産業(生産者)、二次産業(加工業者)、三次産業(サービス業者)が個々に活動を行っている。彼らが、協力・連携して同地域の農畜林水産物の付加価値を見いだした商品開発や販売を行い、住民の生計向上や地域を活性化させていこうという取組みがほとんどない。
- 2016年に、政府は同地域の観光産業の促進を宣言した。同地域には、国内外から年間22万人の観光客が訪れているにもかかわらず、地域性やその固有性を活かした住民主体によるエコツーリズムやグリーンツーリズムは十分に行われていない。また、コミュニティベース型ツーリズムを実施するための宿泊施設等の基盤整備が整っていないのが現状である。
2. 事業の目的
本事業は、零細農村生産者を対象とし、行政、企業、大学、学校、NGOといった関係者とのパートナーシップの構築・連携と地域の自然資源を適切に利用しながら、農畜林水産物の生産(一次産業)だけでなく、食品加工(二次産業)、流通・販売やツーリズム等のサービス(三次産業)の一連のプロセスを統合させた六次産業化による付加価値のある商品、加工技術の開発、マーケティングの開拓やエコ・グリーンツーリズム等のサービスを提供し、農村生産者の主体による持続的な生計向上を図ることを目的とします。シュンドルボンの農畜林水産業の活性化や同地域の農山漁村における包摂的な経済発展への寄与により、零細農村生産者の貧困緩和へつなげていきます。
3. 活動内容と期待される成果
本事業は3年間の予定で実施されます。
第1年次
農畜林水産業の六次産業化へ向けた基盤整備、組織化、能力開発、商品(案)、加工技術の開発やローカル市場での販売、エコ・グリーンツーリズムの施設整備・実施等を通じて、対象とする農村生産者が六次産業を進めるためのプラットフォームの構築を図ることを目指して実施します。
第2年次
農畜林水産業の六次産業化による1次産業者の生産技術のより一層の向上、加工や商品の品質改善を通じてバングラデシュ国内で開発された農畜林水産物の販売、並びにエコ・グリーンツーリズムの本格実施を通じ、11の小学校(教師34人、生徒1,583人、保護者3,166人)と植林等を通じた地域の自然環境を保全しながらシュンドルボン農林畜水産業協同組合(直接受益者265世帯)の生計向上を図ります。
第3年次
地域の自然資源を有効且つ適切に利用・保全しながら、農畜林水産物の6次産業化およびエコ・グリーンツーリズムの促進・拡大により、受益者の生計向上を達成していくための定着を図る。
主な活動内容と期待される成果は、下記の通りです。
■活動内容
1年次
- シュンドルボン農林畜水産業協同組合(Sundarbans Workers Cooperative Society)の組織形成
- 協同組合の組織強化
- 適切な農林畜水産業の生産技術の習得や商品開発・サービスを行うための技能向上
- シュンドルボン沿岸流域を中心とした住民参加型の植林と環境教育
2年次
- シュンドルボン農林畜水産業協同組合(Sundarbans Workers Cooperative Society)の組織運営・基盤の強化
- 適切な生産技術の習得や商品開発・サービスを行うための技能向上と商品の販売
- 適切な農林畜水産業の生産技術の習得や商品開発・サービスを行うための技能向上
- シュンドルボン沿岸流域を中心とした住民参加型の植林と環境教育の実施
3年次
- 農村生産者協同組合の組織運営・基盤の定着
- 適切な生産技術の習得や商品開発・サービスを行う技能定着と商品の販売拡大
- シュンドルボン沿岸流域を中心とした住民参加型の植林と環境教育の実施
■期待される効果
1年次
- 農畜林水産者が連携して協同組合を形成することで、農畜林水産者業の活動の効率性が向上し、同産業へアプローチするための基盤が強化される。また、組合として政府に登録を行うことで、フォーマルな組織として信頼度の高い活動が可能となる。さらに、組合員は組合の運営費の支払いを毎月行うことで、組合を継続していくための当事者意識が醸成される。
- 研修を通じて、各組合員が組合の組織運営や生物多様性保全に関する理解が深まる。また、組合の事務所建設により、組織施設の強化へとつなげることができる。
- 農畜林水産物の技術改善、付加価値のある商品(案)の開発や、バングラデシュのローカル市場での販売およびエコ・グリーンツーリズムの施設整備とその実施等により、直接受益者の生計が向上する。
- シュンドルボン周辺の農畜林水産業に携わる第一次生産者や小学校による植林とその環境教育を行い、沿岸流域の森林が保全される。
2年次
- 協同組合の組織運営やその基盤が強化されることで、商品を開発・販売するためのマーケティングを確立することができる。
- 農畜林水産物商品の品質改善や新商品の開発、クルナ市およびローカル市場での販売店舗の設置、並びにバングラデシュ品質管理検査機関(BSTI)による国内(全国)の承認およびエコ・グリーンツーリズムの促進等により、直接受益者の生計が向上する。
- シュンドルボン周辺の農畜林水産業に携わる第一次生産者や小学校による植林とその環境教育を実施することで、持続的な森林の保全が行われる。
3年次
- 協同組合の組織や施設の維持管理に関する計画策定やそれらを運営する組合員の技能が向上・定着することで、持続的な組織基盤が確立される。
- 農畜林水産物商品の品質向上や、販売店、オンラインマーケティング、エコ・グリーンツーリズムの拡大・定着等により、直接受益者の生計向上を図る。
- 組合員や小学校を中心とした教師、生徒、保護者が植林及びその環境教育を継続していくことで、シュンドルボン沿岸域の自然環境が保全され、持続可能な農畜林水産業へ貢献する。
このプロジェクトについて
プロジェクト期間 | 2020年2月~2023年3月 |
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対象地域 | バングラデシュ・クルナ管区(Khulna Division)、クルナ県(Khulna District)、ダコップ郡(Dacope Sub-district)、バニシャンタ行政村(Banishanta Union) |
対象者 | 農畜林水産者(265世帯)、11の小学校(教師34人、生徒1,583人、保護者3,166人) |
SDGs | |
協力団体 | 環境林業・気候変動省西部森林局、農業省Dacope郡農業局、漁業・家畜省Dacope郡漁業局、経済産業省品質管理検査機関(BSTI)、観光省観光局職員、地方自治農村開発協同省協同組合局、Banishanta行政村代表者・地域住民、クルナ大学、旅行会社、食品加工会社、バングラデシュ環境開発協会(現地NGO)、公立小学校等 |
資金源 | 外務省日本NGO連携無償資金協力 |
お問合せ
公益社団法人日本環境教育フォーラム
電話 : 03-5834-2897(平日 11:00~16:00)
E-mail: info-e★jeef.or.jp(★を@に変換)
担当 : 山口 ※テレワークを実施しています。担当へのお問い合わせはできるだけメールでご連絡ください。