2019年7月より開始した「バングラデシュ・シュンドルボン地域におけるコミュニティベース型シードバンクの設立を通じた里山農業保全活動(資金源: 三井住友信託銀行株式会社(公益信託地球環境日本基金助成))」は、2022年3月にて、計画していた3年間の活動が終了しました。
今回は、3年次の活動成果を中心に総括します。
第3年次の活動では、対象地域にて在来作物品種の栽培・保存・利用や環境保全型農業に関する技術の普及啓発を促進するため、新たに500名の農業者を選抜して研修会を実施しました。また、他の地域から若い農業者5名を招聘したスタディツアー(2日間)の農業交流会を開催しました。
また、市場における在来作物の販売の周知とその拡大を図るため、在来作物品種や環境保全型農業の重要性を消費者レベルへ拡大するための販売戦略の策定やフェアを開催しました。
第3年次事業は最終年度に当たるため、在来作物品種の栽培・保存・利用に関するガイドラインを作成して行政機関へ提出したことや、シードバンク委員会が3年間の事業成果を共有する発表会を開催しました。主な活動成果は、下記の通りです。
・53種類の在来作物種子のカタログ作成や、種子の保存・活用・栽培や環境保全型農業に関するガイドラインを作成することで、地域主導型のシードバンクを進めていくための仕組みを提示することができました。
・市場において在来作物の販売チャンネルを設けたことで、受益者(40世帯)の事業実施前の世帯当たりの農業に関する平均収入は7,000タカ(約9,000円)であったが、7,945タカ(約11,500円)まで向上させることができました。
・公立小学校(11校)の生徒214名が在来作物種子や環境保全型農業をテーマとした学習会、並びに在来果樹(500本)の植え付けに参加しました。子どもたちにとって地域の生物多様性保全を考える上でも重要な学びの場となりました。
今後、本事業をより効果的なかたちにしていくためには、今回の活動成果を踏まえて行政が在来作物種子の保存・利用や環境保全型農業の枠組みの策定を行い、それが地域社会や市場において機能・運用させていくことが求められます。そして、シードバンク委員会が現地NGOのフォローアップを受けながら行政との連携も図って3年間の活動成果をより確かなものにしていけるよう、事業全体の計画者としてモニタリングを続けていきます。
文責: 江戸川大学 社会学部 現代社会学科 専任講師/日本環境教育フォーラム 客員上席研究員 佐藤 秀樹