JEEFでは、バングラデシュでユネスコの世界自然遺産に登録されているシュンドルボン地域の農村部の零細農村生産者を対象とした農畜林水産物の6次産業化とエコ・グリーンツーリズムの取組みを実施しています。本事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力の資金源により2020年2月からスタートし、3年間の計画で進めています。
今回は、本事業の3年次実施期間にあたる2022年3月~2022年8月に実施した活動の進捗について報告します。第3年次の事業期間では、対象村の直接受益者である農畜林水産者(265世帯)、11の小学校を対象とし、地域の自然資源を有効且つ適切に利用・保全しながら6次産業化の促進による生計向上の達成を目指して実施しています。今回の活動期間における主な成果は、下記の通りです。
(1)農村生産者協同組合の組織運営・基盤の定着
- 事業終了後を見据え、組合の運営方法、施設の維持管理や6次産業化の進め方等について議論を深めました。
- 専門家の指導の下、商品をオンラインで販売するためのアプリケーションの開発を進めました。
- 協同組合による定例会の開催や組合員が80タカ(100円程度)/月/世帯を集め、組合を持続的に運営していくための資金の貯蓄を図りました。
(2)適切な生産技術の習得や商品開発・サービスを行うための技能定着と商品の販売拡大
- 商品の品質を向上させるための研修会の開催、オンラインマーケティングによる販売戦略の検討等を行いました。
- 農業展覧会や青空市等へ出展し(3回、計約6,000人参加)、開発した農畜林産物に関する商品の展示、販売を行いました。
- バングラデシュ全国において商品を販売する22店舗の開拓・販売や5万人以上に渡る人たちへのプロモーションを行いました。その結果、各グループの生計(世帯当たりの平均現金収入)は事業実施前よりも、漁師グループ: 30%、農業・畜産グループは28%、 非木材林産物生産グループ: 36%、エコ・グリーンツーリズムグループは6倍増加しました。
(3)シュンドルボン沿岸流域を中心とした住民参加型の植林と環境教育の実施
- 協同組合員、11の小学校の直接受益者を対象に植林活動(マングローブ: 20,000本、果樹・薬木:5,000本)とその環境教育を行い、対象村落周辺の農地、樹木や漁場等の里山・里海の保全・再生およびシュンドルボン沿岸流域の森林保全を進めることができました。
本年度は事業終了の最終年度となることから、今後は、事業終了後の各施設・機材の維持管理、協同組合の運営方法や販売を拡大していくための戦略を再確認した上で、農村生産者協同組合の組織運営・基盤の定着を図っていきます。また、10月からは、現地の観光シーズンになることから、観光客の受け入れによる生計向上を一層進めていきたいです。
※活動計画と第1・2年次の活動成果は、下記のウエブサイトに掲載しています。
文責:佐藤秀樹(江戸川大学 社会学部 現代社会学科 専任講師/日本環境教育フォーラム客員上席研究員)