私が日本に生まれて良かったと思うことのひとつに「温泉文化」があります。ご存知のとおり日本にはたくさんの温泉が湧いていて、気軽に立ち寄れる入浴施設も多くありますよね。これから肌寒くなるとますます温泉が恋しくなります。紅葉を見ながらジワーっと熱いお湯に浸かるのもなんとも言えない悦びです。
私は山登りが好きなので、下山してホッと安堵のなかで浸かる温泉には特別な想いがあります。あれに勝る解放感はなかなかありません。温泉成分や効能について専門的な知識は持っていないのですが、火山や地質に興味のある私は、温泉は地球の体温を感じることだと思っています。長い時間をかけて地球の成分を含ませながら染み込んだ水が地球内部の熱によって温められたのが温泉です。染み込んだ地質で泉質は決定づけられます。しかもマグマに近いところほど熱い温泉が湧きます。当然、遠のけば冷めたい鉱泉にもなります。
はあ~、どうですか! この地球のロマン! それなので私は特に加温していない(できれば循環でもない)源泉に浸かるとき、地球に浸かっている感覚になります。まるで地球の胎内にいるような壮大な想像をするのです。是非、みなさんにも試してほしいなとは思っていますが、隣に入っている人に話しても理解されないことが大半なので興味が湧いた方だけ黙って想像してみてください。
生まれてから身近にある温泉ですが、海外に行くと当たり前ではないことに気づかされます。温泉が湧いている国も多くはないのかもしれませんが、湧いていても入浴するために活用していない国がほとんどではないでしょうか。そもそも湯船に他人と裸で一緒に入るなんて言語道断、信じられないと思っている人が多いのです。水着着用で入る温泉プールのような施設はたまに出会いますが、なんとも味気ない。しかしそれは入浴文化の違いなので責めるつもりはありませんが、ただ日本人としては「なんか違う」のです。
そして海外の山を歩くこともあるのですが、日本だと登山口近くにはたいてい温泉があります。むしろ街にいるよりも確実に見つかりやすい。ですが、海外にはない。汗をかいて土まみれになって下山してきてもホテルのユニットバスまでお預けです。そこに山登りの真価がある訳ではありませんが、なんだか完結しない。山を神とし、山に登って自然や神と一体化する、それが日本の山登りのルーツです。温泉にしても自然との一体化のひとつだと信じています… 海外に行くと日本の山って素晴らしいな~と改めて思います。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。