お土産プロジェクト開始 2014.03.07

【実施期間】2013年11月1日(金)〜15日(金)
【開催地】ブータン ポブジカ村
【主催】独立行政法人国際協力機構(JEEF受託)
【協働】王立自然保護協会

皆さんは、旅行先で「お土産」を買う習慣はありますか? ブータンも観光地なので、町にはそれなりにお土産屋さんがありますが、ポブジカには、それだけで生計を立てているお店は一軒もありません。ホテルの近くでは古道具屋さんが、自宅で馬具や籠、穴だらけの古着など本当にただ古いだけの生活用品を並べていたり、お寺の大工さんがお天気のよい日だけブータン式テーブルを売っているほかは、鶴センターで、管理人さんが気が向いたときにだけ見せてくれる、地元の人が持ち寄ったものを置いてある部屋の3か所がありますが、どこもポブジカオリジナルのお土産は作っていません。

お土産は、数年たってもそれを見るだけで旅を思い出すことができるもの。また、消費するものや実用品。と、重複しつつもいくつかのカテゴリーに別けることができます。そして、重要なポイントは、お土産は旅先から故郷まで持って帰らなければならないということ。欧米の方々の中には、1メートル×50センチほどのお土産用の仏像や仏画、お面等大きなものを好んで購入される方がいます。送料は目が飛び出るほど高く、品物本体を上回る事もありますし、多くの観光客は豪邸に住んでいるわけでもないので、そもそも巨大でインパクトが強烈なものを自宅に置くこともできません。
特に日本人向けというわけではありませんが、観光地でのお土産は次の要素が必要と思われます。

  1. 地元の文化や風習を受けついでいるもの
  2. 地元で入手可能な材料でできていることまたその商品によって地域環境にインパクトを与えないこと(材料を他の町から調達しなければならない場合、材料が尽きたらそれっきりになりやすい)
  3. コンパクトで軽く旅行者が持ち帰りやすいもの(壊れやすいものはNG)
  4. 首都や他の地域では手に入らず、そこに行かなければ入手困難なその土地固有のもの

プロジェクト開始直後より、ホームステイ研修の合間などに、地元の方々とは様々な素材やモチーフを探求し、ポブジカらしさとは何かをワークショップなどを経て追求しました。もともとお土産に対して、「遠くから来た人が購入するもの」ということ以外、ほとんどイメージがなかったようですが、村のシンボルとして「ポブジカ=オグロヅル」というイメージはすでに持っており、そのモチーフを起用する理由が分かった時は、皆妙に納得していました。

鶴祭に出店してみよう

今回の渡航は、毎年11月11日(祝=第4国王誕生日)に開催されるポブジカ・オグロヅル祭に合わせて、身近なものでお土産になりそうなものを持ち寄り、微調整して、販売を試みることが主な目的でした。

当初は主に、羊毛を素材にしたワークショップを行う予定でしたが、羊毛織り名人のお宅で不幸があったり、村中がチベット仏教の聖物の巡回に出かけてしまったりという事態の中、羊は飼っていないけど、お土産作りには参加したい20代女性陣が集まりました。彼女たちはポブジカ環境マネジメント委員会(PEMC)の婦人会メンバーではなく、新たにプロジェクトに興味を持ってくれた若手たちです。絹織物や裁縫などに興味がある人たちが集まったので、裁縫関連のワークショップにシフトしようと思っても、ミシンが置いてある鶴センターは工事中でミシンを取り出せる状態ではありません。そこで、普段は薪に使うヒマラヤゴヨウマツ(blue pine)を削り、ネームタグを作ってみました。表には鶴の絵、裏には購入者に名前を書いてもらうイメージです。また、直径3センチぐらいのシャクナゲの枝を輪切りにし、きれいにサンドペーパーをかけたものに鶴の絵と「Phobjikha, Bhutan」の文字を入れました。シャクナゲ材は軽く固いので、レードルやスプーンなど台所用品として昔から重宝されているのだそうです。他にも鶴をモチーフとした小さな木彫りを5点ほどデザインしました。

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観光客もガイドも興味津々

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シャクナゲの枝を素材にしてネームタグを試作

お祭り当日は、会場のお寺の境内にテーブルを置き、商品に購入者自身が払いたいと思える値段をつけてもらうという方法を取りました。5時間で約8,500円分(30点ほど)が売れました。観光客を案内するガイドたちにもオリジナルのお土産を作るというコンセプトは好評でした。店番担当以外のメンバーも入れ代わり立ち代わりお手伝いに来てくれ、皆シャイながらも、観光客との対話を試み、どのような商品や品質が好まれるのかを直接感じることができる良い機会でした。

多少乱暴なことを言ってしまうと、こちらで材料を選びデザインをし、作業工程を教えて商品作りをすることは実は簡単です。しかし、当プロジェクトは2014年10月で終了します。住民自ら、商品開発に携わり、アイディアから商品化及び価格設定やマーケティングまでを一緒に実施することにより、私たちがいなくなっても、土産物プロジェクトがちゃんと定着する事を目標としています。新しいアイディアにも柔軟に反応し、また若者らしくおしゃれや流行に敏感な彼女たちが関わってくれるのは、とても頼もしいです。

将来的には、どうやって「ポブジカ・ブランド」を創り上げ、そのクオリティを保持するかということも視野に入れ、商品開発を行っていきたいと思っています。

文責:柴原 みどり(JEEF職員)

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