前回は、学習に子どもを惹きつける工夫について紹介しました。今回は、特に活動始めの5~10分間のいわゆる「導入」部分で大切な「活動の目的を明確にする」ということについて紹介します。子どもたちが積極的に考えられるようになるためには、落ち着いて考えられる土台づくりが必要です。
少し話はとびますが、以前「やりたくないと言っている子どもにどう対応すればよいですか?」という質問を受けたことがあります。私は子どもが活動に乗ってこないとき、単純に活動がつまらないという理由以外にもいくつかの可能性を考えるようにしています。その内の一つが、活動の目的が明確に伝わっていないために子どもたちが何をしていいかよくわかっておらず「見通しがつかないからやりたくない」という状態です。これは失敗することに臆病な現在の子どもたちにはとてもよく起こります。
私たち大人は、初めて経験することであってもある程度その先の状況を推測することで見通しを立てることができます。しかし、子どもたちにはそれはまだ難しい作業です。自分がどの方向に向かっていけばよいのか、何をすればよいのかが明確でないと、子どもたちの不安な気持ちが高まり積極性が低下してしまいます。
体験学習的に活動を行おうとする際、よく指導者が「マジシャン」のようになってしまうというまずいパターンがあります。これは導入部分をぼかしておいて、子どもたちが一通り体験をした後で種明かしをするというやり方です。このやり方はたしかに子どもたちにとって新鮮な驚きと共に学ぶことができますが、活動中は不安に囲まれているために探り探りで心から探究を楽しめなくなってしまいます。
私は、主役は子どもたちであるということを忘れないようにしています。子どもたちが考えるということを目的にするのであれば、そのための材料は明確に示してあげる方が効果的ではないでしょうか。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。