【実施期間】2014年4月15日(火)〜27日(日)【開催地】ブータン ポブジカ村
【主催】独立行政法人国際協力機構(JEEF受託)
【協働】王立自然保護協会
前回の渡航から半年近くが経過した4月、シャクナゲやこぶしの咲くブータンに戻って参りました。今回の渡航の目的は、昨年11月以降に完成した成果物の確認と、10月末の事業の終了の準備を関係者の間に周知することでした。
12月以降、ブータンの王立自然保護協会(RSPN)側の頑張りもあり、3月末までに、湿地内のボードウォーク、ポブジカ及びウォンディ・ポダン県の蝶のガイドブック(印刷待ち)、ホームステイ運営マニュアル、ポブジカの住民主体の観光のホームページなどが完成しました。ボードウォークは既に多くの観光客が利用しており、大変好評ですよ、との弁はRSPNの職員ジグミさん。まだボードウォークを敷設したばかりなので、一部沈んでしまった箇所の補修工事を行う必要はあるものの、十分に利用されている様子が伺えたのは成果でした。
完成したボードウォークを歩く観光客
一方、肝心の観光客の数ですが、ポブジカで会ったポブジカの持続可能な観光運営委員会の代表ゲルツェンさんによると、昨年6月から今年3月末までで約250名が訪れたのだそうです。これは、昨年2月に訪れたタイ北部のラフ族の村の年間訪問客数に匹敵するもので、予想外に順調な滑り出しだったと言えます。
また、ゲルツェンさんを含めた3名の運営委員会のメンバーには、ミーティングの際に、観光客の受入以降、村で変わったことについて聞きました。彼らの回答は次の通りでした。
変化1 村の人の公衆衛生の意識が変わった
ホームステイ研修を昨年受けた時には、言われたから家の中をきれいに掃除するという人が多かったが、今ではホームステイを受け入れている家を見習って、隣近所の家も室内をきれいに清掃するようになった。
変化2 村の伝統文化、自然などを見直すようになった
特に、ガイドやホームステイを通じ、観光客からポブジカについて称賛を受けるにつれ、自分たち地域の自然、伝統、文化を見返すようになった。今では、湿地にゴミが落ちていると、拾う人も出てきている。
私は、「観光を通じ、収入が得られるようになった」という答えが真っ先に来ると思っていましたので、彼らの答えは予期していなかったことでした。
村の人たちのこのような変化は、事業終了までに見られないかもしれないと思っていただけに、想定外の成果に嬉しくなりました。また、事業を通じて村の人々の衛生観念が改善したというのは、全く想定していなかったことでした。
ポブジカだけでなく、事業の進捗確認を行っているステアリング・コミティからも嬉しい意見をもらえました。4月25日に行った会議の場で、ポブジカのある、ウォンディ・ポダン県の地方事務所の職員サハデフさんに、「ポブジカのエコツーリズム事業の終了後、ポブジカの人たちが自分たちで自立してエコツアーを運営していけるようになるまで県として支援していくつもりである」とおっしゃっていただいた上、だからこそ、県地方事務所にポブジカのエコツアーのシステムの詳細を、知らせて欲しいという要請がありました。早速、RSPNのチョキさんが対応することになりましたが、県地方事務所がポブジカのエコツーリズムの今後を、真剣に考えてくれていることが実感できた瞬間でした。
エコツーリズム運営委員のリーダー:ゲルツェンさん
村人におきた変化について語ってくれました
また、ステアリング・コミティ会議では、今後のエコツーリズムの品質維持のために、ポブジカのエコツーリズムの仕組みを政府観光局に認めてもらう方が良いという意見や、将来観光客が増えることを見越して、キャリング・キャパシティをどうするのかという意見が出るなど、事業に関わっている人たちの事業終了後もポブジカのエコツーリズムの仕組みを維持、改善していこうという意欲が十分に伝わってきました。
3年半の事業はいよいよ10月末に終了します。
文責:田儀耕司(JEEF職員)
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