機関誌「地球のこども」 Child of the earth

小学生を対象としたスンダルバンス地域の生物多様性保全のための教材案が完成しました! 2014.07.25

【事業名】バングラデシュ国スンダルバンス地域における生物多様性保全の教材開発と人材育成事業
【実施期間】2013年1月~2014年12月
【実施地】バングラデシュ人民共和国  スンダルバンス地域クルナ管区
【助成金支援団体】トヨタ自動車株式会社
【現地パートナー団体】バングラデシュ環境開発協会

本活動は、2013年1月〜2014年12月の2年間に亘り、バングラデシュ国スンダルバンス地域における小学校(3、4、5年生)で使用可能な生物多様性保全の学習教材やコミュニティで普及啓発するための視覚教材を開発し、小学校教諭が本教材を試行して小学生や地域住民を対象とした環境教育の普及啓発を行い、同地域の生物多様性保全に対する意識の向上を図ることを目標として実施されています。今回は、前回の地球のこども10月号でご紹介させて頂いた2013年1~6月までの活動に引き続いて、6~12月までの半年に渡る活動成果について報告します。

本活動期間の中で、JEEFは現地のパートナー団体であるバングラデシュ環境開発協会と協力しながら、小学3、4、5年生とコミュニティ住民を対象とした教材案を開発しました。これらの教材開発に当たっては、本プロジェクトの有識者委員会のメンバーであるクルナ大学の教員による助言や同大学の学生の協力を仰ぎながら進められました。それでは、開発された教材案の内容についてご紹介します。

クルナ大学の学生と教材開発のためのワークショップの様子

クルナ大学の学生と教材開発のためのワークショップの様子

3年生を対象とした教材案

本教材案は、小学3年生を対象としていることから、できるだけ文字量を少なくして、スンダルバンス地域の自然環境や生物多様性の様子が、容易に理解できる絵や写真を多用した色彩豊かな構成とし、子供の興味・関心を引き出すための工夫が施されています。本教材では、子供たちに次の点を伝え、考察を深めてほしいと考えています。
①スンダルバンス地域の地理的な位置やベンガルタイガー等の主要な野生動物、鳥類、昆虫、魚や植物による生態系システムの重要性や食物連鎖の仕組み。
②同地域は私たちの誇りと遺産であり、本地域の豊かな生物多様性が私たちに恵み(食物や自然資源)を生み出し、私たちの生活を支えていること。
③同地域が国としても国際的にも重要な場所として位置づけられていること。

4年生対象とした教材案

本教材案は、スンダルバンス地域で、昔から伝わる動植物の神話を、生物多様性の重要性と関連させながら、同地域における生態系の保全について学ぶことのできる内容となっています。ここでは、子供たちにスンダルバンス地域の野生動物(ベンガルタイガー、ワニ、シカ、サル)、植物に関する物語や漁師、農業従事者、蜂蜜収集人によって伝統的に語り継がれてきたお話から、同地域の生物多様性保全の重要性を考察して本地域を大切にする心を培うことができるように配慮されています。

5年生を対象とした教材案

本教材案は、詩を通じて同地域の自然環境や生物多様性について学ぶ内容となっています。読本では、子供たちにスンダルバンス地域の主要な野生動物、植物、鳥類、昆虫や魚を題材とした詩を音読することで、同地域の生物多様性保全のあり方について考えを深め、本地域を大切にしようとする行動へつなげることができるような効果的な感情やビジョンが盛り込まれた内容となっています。

3・4・5年生対象

スンダルバンス地域の生物多様性に関するカードゲームと同地域の模型案

本教材案の内容は、スンダルバンス地域の主要な野生動物、植物、昆虫、鳥類、魚に関する写真と説明文を付けたカードゲーム(ゲームの進め方に関するマニュアル含)です。また、本ゲームを進めるに当たっての前段として、スンダルバンス地域の地理や自然環境に対するイメージを持ってもらうように、子供たちの興味・関心を引き出すための模型(ミニチュア)も開発されました。

スンダルバンス地域の模型案

スンダルバンス地域の模型案

本ゲームでは、最初に、模型を観察しながらスンダルバンス地域の概況を捉え、その後、4~5人毎のグループに分かれます。そして、カードを使用して同地域の動植物と地域住民の日常生活がどのようにつながっているのかについてグループ毎にストーリーを創りながら、スンダルバンス地域のマングローブ林や生物多様性保全について考える教材となっています。

スンダルバンス地域の生物多様性保全を学ぶすごろくゲーム案

本教材案はサイコロを振りながらスンダルバンスの主要な場所を訪問し、スンダルバンス国立公園に入る際の決まりごと(服装、持物等)および公園内での規則、公園の適正な利用方法や現地語(local language)等を学びながら、同地域の自然環境と人との共生のあり方について学習できる内容となっています。

コミニュニティ住民対象

地域住民への普及啓発を目的とした教材案

本教材案は、地域住民を対象としてスンダルバンス地域のマングローブ林と生物多様性保全の普及啓発を図ることを目的としています。内容は、本地域に伝わる伝統的な歌や動画を活用した視覚教材を作成する予定ですが、今回の活動期間では、その原稿案を作成しました。

2014年1月には、開発された教材案を検討するための研修会が50名の小学校教諭を対象として実施されました。現在は、上記50名の教師が開発された教材案を小学校で試みることや、一般住民に対しても開発された視覚教材の試行を行っています。開発された教材案は、試行によるモニタリングの結果や関係者との意見交換を通じてブラッシュアップを図り、最終版を作成する予定です。

本活動は、トヨタ自動車株式会社の「トヨタ環境活動助成プログラム」の助成を受け、現地のパートナー団体であるバングラデシュ環境開発協会(ローカルNGO)の協力を仰ぎながら進めています。

文責:佐藤秀樹(JEEF職員)

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