今回は、前回の「待つということ」の続編のような話です。7月末~8月頭にかけて、小学4・5年生を対象とした科学教室を開催しました。今年で3回目となる夏の教室ですが、今年は特に実験にじっくり取り組むことを意識してプログラムを組みました。何を知るための実験なのか、どう使う器具なのか、何のために結果を記録するのか、一つ一つの意味を子どもたちに伝えていきました。
ある日、薬品を「すり切り」という手法を使って量りとっているときのことでした。それまで弾けるような笑顔で活動していた男の子が、急に真面目な顔になって「こんな丁寧に教えてもらったことないからなぁ…」とつぶやきました。詳しく聞くと、すり切り自体は授業で習ったけれど、先生が説明するのを一度見ただけで後は自己流でやっていたとのことでした。「かもが手を添えて教えてくれたから、力加減がわかったよ」と彼は嬉しそうでした。
彼とのやりとりの後、僕はふと実験のおもしろさって何だろうと考えました。実験のハイライトは、やはり結果が出た瞬間です。しかし、その結果に行き着くまでのプロセスを自分で組み立てることができたという自負は、結果が出た瞬間の感動をさらに大きくするのでしょう。大人たちは、子どもたちに一番いいところを味わってもらおうとお膳立てしようとしますが、子どもたちは最初から最後まで自分でやりたいのです。同じようなことは日常の学びの場でも起こっています。危ないから、汚れるから、時間がかかるから、いろいろな理由を付けて大人たちは「おもしろい」部分を子どもたちから取り上げてしまいます。
子どもたちには試行錯誤しながら学ぶという経験がとても大切です。試行錯誤という学び方は、失敗する権利も、成功・発見する権利も子どもたち自身が持つことができます。学びのおもしろさというのは、子どもが自分の手で新しい知識や技能をつかみ取ることなのではないでしょうか。
GEMS(ジェムズ)は、カリフォルニア大学で開発された子ども対象の科学と数学の体験学習プログラムです。 大人が知識を教えるのではなく、子どもたち自身が実験を企画し、話し合いながら結論を導き出すようにアクティビティが構成されています。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。