機関誌「地球のこども」 Child of the earth

ESDは後付けで! 2015.01.19

文:浜本 奈鼓 くすの木自然館

「ESDは難しい」とか「何をすればESDになるのか?」など、いまだに耳にします。確かに「持続可能な社会をつくるために!」などと、普通のしかも地方で生活している人たちに声高に叫んでも、具体的な活動の答えなど出てこないと思います。そこで、私が行っているのが、題名にもした「ESDの後付け」です。実際の集落の生活の中で、家庭で、学校で、仕事で意識せずに行われている(行われてきた)様々な事柄の一つ一つに「まさにその活動こそがESDですよ!」と後押ししていくのです。

川の上流に暮らす人々が、下流の人の暮らしのために水を汚さないように、伝統的に行っている川の清掃活動。なるべく農薬も除草剤も使わず、小さな棚田を守っている農家の方々の取り組み。海を汚しては申し訳ないと、海水を汚さないエサの工夫を続けている養殖漁業の漁師さんたち。また、子どもたちがどんなに少なくなっても、学校に通えるように里親になったり、集落ぐるみで学校を盛り立てる事に一生懸命な山間部の人々の努力など、数えきれないほどの、胸が熱くなる事例に今まで接してきました。その、一つ一つが、分野や手法が違っても、まさに「持続可能な社会」を作っている原動力なのではないでしょうか? もっと、未来に目を向ければ、そんな風に一生懸命に頑張っている大人たちを見て育ったどもたちは、「どうすればみんなが心から望む社会を築けるか」を、きっと、学びながら大きくなっていくのです。

毎日家族で食べる食事の中に、たくさんの人たちの「思い」が籠っていることを少しずつでも伝えながら食卓を囲むこと。周囲の大人たちが、自分たちが大人になっていくのを見守っていてくれること。自分たちが、大切にされているように、周りのみんなも誰かの大切な人であること。当たり前のことかもしれない些細なことを、きちんと言葉や態度で伝え続けることの大切さが、「ESD」ではないかと思うのです。

私は自分の子育ては卒業し、もう孫がいる年齢になりました。自然学校や、環境学習の授業を受け続けてきた子どもたちも、みんなすっかり大人になって、お父さんお母さんになったり、世界に羽ばたいて行ったり、みんな社会に役立つ仕事をしています。そんな、彼らの事を考えるたびに、「ESD」ってこういうことだと確信を持てるのです。

少しでもいい未来を創るための努力を惜しまず、伝え続けること。本当の答えは、ずっと未来の子どもたちが示してくれます。そう、信じて活動をこれからも続けていきます。

hamamoto

浜本 奈鼓(はまもと なこ)

鹿児島県出身。「特定非営利活動法人 くすの木自然館」代表理事。鹿児島の自然と文化にこだわった、環境教育活動を広く展開し、干潟や森林、野生生物の生態調査、保全活動を産・官・民・学連携で進めている。 何より鹿児島を愛する自然案内人の草分け。

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