機関誌「地球のこども」 Child of the earth

復興の現場から見えてきたESDの役割 〜子ども支援とコミュニティ形成〜 2015.02.12

文:黍原 豊 三陸ひとつなぎ自然学校

地域の自然を活かした子どもの居場所づくり

三陸ひとつなぎ自然学校では、釜石市で震災後から、放課後の子どもの居場所を仮設団地で開設してきました。しかし、仮設の周囲は車の通りも多く、騒音の問題もあり、より良い場所を探していたときに、地元の方から森を借りることができました。

その森は、約60メートル四方のクリ林で、周辺にクルミやカキ、巨木のケヤキ、その根元にはホコラもあり、昔から大切にされてきた場所です。地区の方々やボランティアなどと草刈り、枯れ枝の整理などを少しずつ行いました。さらに、ブランコやハンモック、木の上の展望デッキなどの遊具も設置。手を入れるほどに気持ちの良い空間になります。早速、放課後の子どもの居場所や子どもキャンプ、親子向けの森のようちえんで活用を始めました。クリ拾いをしたり、キノコを探したり、たまにやってくるリスを見つけて大興奮。森の中で楽しさ、心地よさを十二分に体感しています。

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そして、この森を地域の方にも知ってもらう機会として2014年9月に「森とえほんフェスティバル」を開催。絵本読み聞かせ、親子ヨガ、郷土食の提供、わらべうたライブなどを地区の方々や多くのボランティアの協力を得ながら実施しました。近隣から約120名の子どもから高齢者までが訪れ、「地元にこんな素敵な場所があることを知らなかった」という声をいただきました。

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子どもの居場所づくりとして始った取り組みでしたが、結果として、地域の人と人、人と地域の自然がつながる場が生まれました。

復興とESDそして復興の先の地域づくりへ

この取り組みは、被災地の将来を見据えたときに意義のあるものです。ハードの復興は目に見える形でどんどん進んでいますが、将来復興したまちで暮らすのは今の子ども達です。地域の自然や文化の体験を通して子どもの地域への愛着を育むことは、将来の地域づくりへの参画につながります。また、場づくりに地域の方を巻き込むことで、地域全体で子どもを育むコミュニティが形成されます。そして、より良い地域がさらに次の世代へと手渡されていきます。これはまさに持続可能な地域づくりを担う人材育成です。ESDの考え方と一致し、被災地に限らず地域の未来を考えたときにとても重要な視点です。

震災を契機に人口減少などが進行し、地域課題の先進地となりました。これは、震災に関係なく将来的に全国各地で直面する課題です。震災後、全国から支援をいただいていますが、今後は地域課題の解決手法を各地へお伝えし、お返しができるよう、地域を担う人材の育成を続けていきます。

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原 豊(きびはら ゆたか)

NPO法人岩手子ども環境研究所(森と風のがっこう)や岩手県立児童館を経て、現職。現在は、2014年4月より復興支援員制度で設立された釜石リージョナルコーディネーター協議会(釜援隊協議会)に所属し、(一社)三陸ひとつなぎ自然学校へと派遣され、復興まちづくりに携わっています。

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