絵:丸山魁斗 文:鎌田 晴美 ラナ・ポロサ・ポロサ
最近、子ども達が大勢で走り回って、賑やかに遊んでいる姿を見る機会が少なくなっています。子ども達が少人数で遊ぶことはあっても、多人数で大胆に遊ぶ機会は減ってきているように思います。遊び場の減少(災害による場合も含む)、塾や習い事など過密なスケジュール、少子化など、理由は様々ですが、その結果、多人数で遊ぶことにより育まれるはずのコミュニケーション力が薄れてきているように感じています。
ダイナミックな遊びから得られる気づき・学び
私はアドベンチャーの要素を使って、気付きや学びを得て、自分へのチャレンジとして一歩踏み出すきっかけ作りのプログラム提供をしています。そのプログラムの一部に学校(宿泊研修など)でのクラス単位、学年単位、クラブ活動などの多人数で活動に取り組むプログラムがあります。その活動の中で「みんなで遊ぶ経験をしてきていないなぁ」と感じることがあります。人との程よい距離を保てずに近すぎて嫌がられたり、遠すぎて関われなかったり、人にどう思われるかを気にしすぎて行動出来ずに悩んだり、みんなの前で失敗が怖くてアイデアを試すことが出来ないという子ども達と出会うようになったからです。人との関わり方、友達とのコミュニケーションに自信を持つことが出来ずにいる子ども達が多くなってきていると実感しています。
私は機会があれば、多人数でたくさん遊ぶように心がけています。思いきり走って遊んで体を温め、みんなで声を出して笑って心を温め、たくさんの人と触れ合いながら、次から次へと人と関わることの楽しさを感じられるのが、多人数で遊ぶ醍醐味です。そして、遊びのエネルギーをふんだんに使います。少人数とはまた違った楽しさです。私自身、より大胆に、豪快に楽しみます。遊ぶことが、楽しみながらいつの間にか人との程よい距離を感じることや、安心して笑い合える雰囲気を自分達で作ることに繋がっていきます。
例えば、蜂が集団で飛び回っていてもぶつからずにいられるのは、周りの状況に合わせて互いに自分の位置やスピードを調節しているからと言われています。鬼ごっこなど多人数で走り回って遊ぶ時には、身体的にも感情的にも自分の身を守るために、蜂と同じように周りを意識して、自分の位置やスピードを調節する感覚が、必要となります。鬼ごっこなどの遊びには、周りを意識して人との距離を感じることで、自分の意識や行動を変えるという気付きと学びがあると考えられます。
多人数でダイナミックに遊ぶことは、自分の意識や行動を変えるという気づきに繋がり、コミュニケーションに必要なスキル、人間関係や社会性について、遊びながら学び合う場を創り出します。
鬼ごっこはあなどれない!
鬼ごっこは、少人数から多人数までバリエーションが豊かな面白い遊びです。特別な道具も使わずに出来るので、心と体の準備が出来ていれば、いつでも遊ぶことが出来ます。
鬼が1人で鬼以外は逃げる人というオーソドックスなものから、ペアでの鬼ごっこ、鬼チームと逃げる人チームのチーム戦、1人の鬼からスタートして全員が1つに合体する吸収型、鬼が次々と増えていく増殖型、かくれんぼと鬼ごっこのミックスなど、楽しみ方はアイデア次第です。活動エリアやルール設定を工夫するだけで、鬼ごっこはダイナミックな遊びに変化します。
やってみて!こんなあそび
バナナ鬼
バナナ菌を持ったバナナ星人達が地球人をバナナに変えてしまう鬼ごっこです。
(1)バナナ菌を持つバナナ星人達を決めます。
(2)バナナ星人が分かるように黄色いものを持つなどの目印があると良いですが、無い場合は「バナナン!バナナン!」と言いながら動き回ります。
(3)バナナ星人にタッチされたら、その場で両手を頭の上で合わせ、バナナに変身して動けなくなってしまいます。
(4)地球人はバナナになってしまった人を助けることが出来ます。地球人2人でバナナになっている人の腕を片方ずつ持ち、2人で手を下げると、バナナの皮をむかれて地球人に復活です。
やってみて!こんなあそび
カルガモファミリー
カルガモ母さんときょうだいで、オオカミから末っ子カルガモを守る鬼ごっこです。
- 1家族6〜7人ずつのカルガモ家族を作ります。各家族の先頭がカルガモ母さんです。
- 子ども達は母さんの後ろに並び、前の人の肩に両手を置き繋がります。
- 家族の数より2、3多くなるようにオオカミを募ります。オオカミが鬼です。
- オオカミは一番後ろの末っ子をねらって追いかけます。
- 末っ子がオオカミにタッチされたら、オオカミはそのまま末っ子になり、母さんが家族から離れてオオカミに変身してしまいます。
- どの家族を狙っても良いので、オオカミ同士で協力も可能です。
みんなで楽しく遊ぶポイント
Point1 怪我を防ぐために周りの動きを意識して遊ぶ
鬼ごっこなどの思いきり走り回るような動きのある遊びでは、自分自身の動きだけではなく、周りの人の動きにも意識をしないと勢いあまってぶつかってしまったり、転んで怪我をしてしまうこともあります。怪我を防ぐためには、スピードコントロールや、ぶつからないことを意識することを伝える必要があります。集団で飛び回ってもぶつからない蜂のイメージです。
Point2 大人も一緒に遊ぶ
大人も一緒に遊ぶことをお勧めします。大人が 「本気で遊ぶ」姿はパワーがあります。ただし、自分の体力と合わせること。無理は禁物です。大人が子どものような笑顔で楽しんでいたら、子ども達も思いきり楽しむぞ!という気持ちが湧いて来ます。本気の笑顔につられて笑っている子もいることでしょう。
Point3 子ども達のチカラ
人数が多くなると感じ方や捉え方の違いから、対立が起きる場合があります。その際に大人がすぐに解決へと導くのではなく、子ども達のチカラを信じて待ちましょう。問題が解決した後に遊びを再開するのか、それともしないのかも含めて、自分達で解決する機会です。ただし、発達段階によっては、子ども達から出て来た情報を大人が整理して子ども達に返していく作業が必要です。年齢に合わせて介入度合いを考えましょう。
Point4 気持ちを言葉にして伝える
「ごめんね」と「ありがとう」という気持ちが湧いて来た時には、勇気を持って言葉にして相手に伝えましょう。言葉にして伝えたことをきっかけに互いの距離が近づいていくことは多いです。「ごめんね」と「ありがとう」という言葉は、決まり事として言わなければならないのではなく、伝えたいという気持ちから言葉にすることが大切です。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。