文:東 麻吏 フリーエディター
各団体の活動自体を知らなくても、
「自然体験に関心あり」の層は、思っている以上に大きい。
0〜9歳の子どもをもつ親に「GW(ゴールデンウィーク)にどこへお出かけしたいか?」と聞いたところ、「自然体験」「農業体験」を挙げた人が8割近くいました(図1)。それほど、「自然体験をしたい(させたい)」親が多いのに、実際には「集客に困っている」団体も少なくないと聞きます。この「ミスマッチ」は、なぜ起こっているのでしょうか?
それは、子どもをもつ親が、それぞれの団体の活動や参加できるイベントについて、単純に「知らない」というのが、一つの要因だと考えます。では、団体の存在や活動を知らしめる(広報する)には、どうすればいいでしょうか。
私は、子どもと一緒に出かける場所を探すためのインターネットサービス「いこーよ」(図2)に携わっておりました。また、一方で、個人活動で登山ガイドと一緒に「外あそびtete」を主宰し、親子ハイキングイベントを行っており、自らの経験から、どうやって活動を「伝え」ていくと効果的なのかをご紹介できればと思っています。
インターネットを使って……ということで、一番最初に思いつくのは、自らの団体のウェブサイトを作成することではないでしょうか。そこに活動内容を掲載したり、活動報告をすることができます。現在は無料で簡単に自らのウェブサイトを作れます。しかし、作ったのはいいが、作りっぱなし……ということはありませんか? そして、それを閲覧している人の質(どんな人が閲覧しているのか)について、考えてみたことはありますか?
文頭でもふれたように、子どもをもつ親は「自然体験」に対して好意的です。ただ、どんな自然体験をしたい(させたい)のかは明確ではありません。また、親自身がアウトドア体験がなくても、「子どもには自然体験を」と考えている人が増えてきているように感じます。なんとなく「自然体験がよさそう……」と考えている人が多く、それは、何か情報を調べるために打つ「検索ワード」に表れています。「いこーよ」には、「お出かけ」や「遊び場」という言葉で検索し、流入する(サイトにやってくる)数が圧倒的に多いのです。具体的に「何を」するのかを決めていない状態で情報を探している人が、それだけ多いということです。しかしながら、そういった人たちは、団体がもっているウェブサイトまで行きつかないことがほとんど。それは、団体名などを検索しない限り、ウェブサイトの情報が検索上位(グーグルやヤフーなどで検索した時に、検索結果として上位に出てくること)にならないためです。
ウェブサイトを閲覧してくれたり、「登山」「田植え」「キャンプ」「ドラム缶風呂」などの具体的なワードで調べることができる層は、すでに「興味・関心」を抱いてくれている層です。実際にイベントに申し込んだり、リピーターになってくれる可能性が高いです。しかし、もっと多くの数を占めているのが、「興味・関心」まで達していない層です。「自然体験をする」ことについては好意的ながら、そういう活動をしている団体があること自体を知らない人たちについて考えてみてください。この層に「認知」してもらい、「興味・関心」「行動」につなげていくということが、集客につながっていくはずです。
そこで「認知」してもらうために有効なのが、インターネットサービスを使った方法です。フェイスブックやツイッターなど「ソーシャルネットワークサービス(SNS)」を使う方法もおすすめしますが、そこで情報を得ようとする層も、すでに「興味・関心」がある状態です。できれば、「いこーよ」のように「親子のお出かけ」という広い範囲を取り込んでいるサービスに、開催するイベントなどの情報登録(無料)をして、告知・集客してみましょう。雑誌のイメージで言うと、アウトドア専門誌よりも一般誌や育児誌などで告知をすべき、ということ。しかし、実際は雑誌での告知は広告料金を払わない限り、取り上げてもらえる可能性が非常に低いので、まずはインターネットサービスを利用してみるのがおすすめです。
ただ、どのインターネットサービスを使うといいのか? も大切ですが、一番意識すべきは、今は潜在的でも、「認知」することから「興味・関心」を引き、顧客(あるいは支援者)になる可能性がある層が存在するということです。団体の活動について、全く「知らない」・「探し出せない」人が、どうやって情報を得ようとするのかを考えてみる、また、情報をもっていない人の立場になってみる。その意識をもつことから、集客の可能性がグンと広がると考えます。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。