文:福岡 義久
学校教育により、リサイクル工作はすでに定着
私が実施しているワークショップでは、お菓子の包装を利用した装飾や財布、雑誌や廃紙を利用したビーズ、ペットボトルを利用した筆箱の作り方等をシェアしています。対象者は子供から年配の方まで幅広く、多くの方が喜んで取組んでいます。ワークショップを開催した数日後には、「今でも工作を続けている」と連絡してくれる人もいます。
この国では、ゴミを利用した工作やリサイクルへの関心は、高いと感じています。学校ではペットボトルに塗装したものを、紐で繋いで柵にしています。お菓子の包装をペットボトルに詰めてから、花壇の仕切りに用いる場合もあります。イベント時にはゴミを利用してデコレーションを作っています。このような背景がある為、私のワークショップも受け入れられているのだと思います。
つくって楽しいだけの「リサイクル工作」?
フィリピンには明るい方が多く、深く悩む事は少ないように感じられます。その為か、こちらが質問した際に思慮に欠けるような回答をされる事があります。
例えば、現在使用している埋立地が満杯になったらどうしますかと質問した時に、新しい場所を作ればいいと即答されます。確かにその通りですが、新しい埋立地を作る場所はあるのか、また満杯になったらどうするのかなど先の事まで考えていないように思えてしまいます。
同様に、ゴミを利用した工作やリサイクルは良いものだ、という認識で思考が止まっているように思えます。その為、工作中に出た端材が散らかってもかたづけず、ゴミから作ったデコレーションも用が済んだらポイ捨てします。
このような事から、工作やリサイクルへの意識は高くともゴミへの意識は依然低いままと言えます。工作ではなくゴミそのものへ関心を持ってもらえる工夫が必要だと考えられます。
私はワークショップを行う際、ゴミ問題の現状についてもお話します。フィリピンから海に流出するプラスチックゴミの量は一年間に750,000トンだという話をすると、参加者は驚きの表情を見せます。フィリピンの首都マニラを流れる川に大量のゴミが浮いている写真を見せた時、悲しいと言う人がいます。彼らの感情に訴えかけることで、少しでも何かが心の中に残るようにと話の内容を考えています。
必要なのは、自ら考える力を育む教育
環境教育を行う上で本人の気づきは重要です。
フィリピンでは考えるより先に解答を欲しがる傾向がある為、彼らに気づいてもらえるようにするには、自分が想定している以上に話を細かく、かつリアリティを高く設定しなければ伝わりません。ゴミ問題でイメージして欲しい未来の事に関しては如実です。
自分が出したゴミが数十年後の未来にどう影響してくるのかをイメージしてもらうのはかなり難しいです。なぜ工作やリサイクルは良い事なのか、今の生活を続けていると将来どうなるのか、という少し先の未来を想像できる教育が出来れば、この土地に住む彼らにとって有意義だと思います。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。