新しい発想は均質な思考からは生まれません。年齢や文化、性別など同一の背景をもつ人たちから新しい発想は出てきません。「違い」が必要なのです。
これは、MITメディアラボ(※)の創設者の一人ニコラス・ネグロポンテ氏の言葉です。彼は、何か新しいことを成すそうとする際には「違い=Difference」が大切だと言います。知的にも、文化的にも不均質な環境が、新しい発想を生むのだ、と。
以前アメリカで研修を受けた時、同じグループになったオレゴン州の小学校の先生が、「僕のクラスには29人の生徒がいて、19種類の言語が飛び交っているんだ」と話してくれました。
言葉も、肌の色も、宗教なども含めて、一人ひとり全く違うという前提で、教育が行われているアメリカを象徴するようなエピソードですよね。それと比べると、日本ではまだ他者と違うこと=特殊なことという意識が強いように思います。
GEMSのプログラムは、人はそれぞれ違う特徴を持っているという多様性を大切にしています。だから、個人作業よりも、誰かと話しながら行う作業がたくさんあります。
しかし、話し合いをしていると、少数派の「違う」意見が全体に受け入れてもらえないことが多々あります。クラスの中で自分だけ違う考えをもっている、先生が教える世の中の「常識」に違和感を感じる、そういった意見は口に出すのさえ勇気が必要なときもあります。どんな意見を出してもいいんだよ、という雰囲気づくりが大事です。
もう一つ僕が心がけているのは、少数派や自分とは違う意見もとりあえず拾ってみること。子どもたちからも「こんな意見でいいの!?」「否定されると思ったのに」と驚かれます。でもそうやって拾い続けていると、たった一人の「違う」意見によって、全員の考え方がガラッと変わる場面によく出会えるのです。
子どもたちから突拍子もない意見が出たときこそ、想定していなかったような新しい探究が生まれるチャンスですよ!
※MITメディアラボ
米国マサチューセッツ工科大学 (MIT) 建築・計画スクール内に設置された研究所。主に表現とコミュニケーションに利用されるデジタル技術の教育、研究を専門としている。現在の所長は日本人の伊藤穰一氏。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。