文:鴨川光(ジャパンGEMSセンター研究員)
思考が拡散する快感
『宝もの箱』という算数のGEMSプログラムがあります。ボタンや切手、ビール瓶の王冠など身の回りにあるものをグループでわいわい話し合いながら仲間分けしていくアクティビティが人気で、体験した方からは「ものを分けるだけでこんなに楽しめるなんて!」という感想をよくいただきます。どうしてそんなに夢中になれるのでしょう。
ポイントは「視点の数」です。例えばボタンを分類する場合、色、形、大きさ、厚み、穴の数といった見た目だけでなく、落とした時の音の高さや跳ね方、転がり方などアクションを加えた時の視点でも分けることができます。かつて「温度(金属製のボタンは触ると冷たい)」で分けた子もいました。Amazing!
視点が多いとそれだけ思考が拡散します。色で分けるにしても、これは何色に入れようか、縞模様はどうしようなど、次々と疑問やアイディアをぺちゃくちゃしている時間はとても楽しいもの。この楽しい時間をぶった切ることなく、その流れのまま学びにつなげるためには、目の前の体験から学びを抽出する関わり方(ファシリテーション)が大切です。
子どもたちの気づきを大切に
教育における大人と子どもの関わりを考えると、一番多いのは「教える(ティーチング)」ではないでしょうか。これは、自分が持っている知識や技術を相手に伝えるというアプローチです。つまり、自分なりの「答え」がある程度想定されているため、その枠組みの外に拡散したアイディアは切り捨てられてしまいかねません。子どもたちの気づきや考えをそのまま活かしていくファシリテーションとは本質的に異なるのです。
効率よく教えることと、楽しく学ぶこと。どちらも大切な教育の要素ですが、教えるだけでなく、子どもたちの気づきを学びに結びつけるアプローチも活用してみてはいかがでしょうか。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。