機関誌「地球のこども」 Child of the earth

地域の若者と考えるゴミ問題(カンボジア) 2017.08.18

文:大森 幸子(JICAシニア海外ボランティア)

プノンペン:若者たちの思い

カンボジアでは、ここ数年近代化が急激に進んでおり、都市部での人口増加に伴った廃棄物問題は深刻な状況である。道路に捨てられたゴミは、大量のハエや蚊が発生しているだけでなく、大雨が降るとこれらのゴミは道路に流れ出て、排水溝を詰らせ町は水浸しになる。

首都プノンペンでは、毎週様々なイベントが行われており、私はそれらに参加しリサイクルの意義や分別を呼びかけるとともに、若者たちからこの国のゴミ問題についての考えを聞くよう心掛けた。
大学では、日本の環境問題の歴史や、現在の日本の取り組みなどを紹介する講義を継続して行った。学生たちは、自分たちのゴミ問題を重要な課題として捉え、興味を持って取り組んだ。彼らの学んだことを、一人でも多くの人に伝えるため、環境ポスターを描くことにした。

彼らは、クレヨンで絵を描いた経験がほとんどなく、最初は戸惑っていたがすぐに自分たちの考えを一気に描きあげた。若者たちは、美しいカンボジアをいつまでも守って行きたいと考えているのである。

王立プノンペン大学でのポスターの作成

王立プノンペン大学でのポスターの作成

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イベントで若者達に聞いた「あなたが出来ることは何ですか?」

イベントで若者達に聞いた「あなたが出来ることは何ですか?」

スバイリエン:問題改善の秘訣はリーダーシップトレーニング?

スバイリエン市は、カンボジアの中でも最貧困地区で最も汚い地域とも言われている。なぜなら、この地域の住民のほとんどが農業従事者であり、収入は天候に左右されるため安定しないからである。
私は、市役所や最終処分場の担当者、そして市民にリサイクルの啓発活動を行い、その効果や、リサイクル製品が出来る仕組みについて説明を繰り返した。

スバイリエン大学では、リーダー育成を目指しリサイクルについての教材を作成するとともに、リサイクルボックスも設置した。集められた資源ゴミの売り上げは、1年間で29ドルに上り、学生たちはそのお金で箒やゴミ箱を買うなどしてさらに活動を進めた。彼らは、この取り組みを広げるために、全校生徒へプレゼンテーション、市民向けラジオ放送、ポスター展示で呼びかけた。

リサイクルボックスに集まったゴミを売る生徒

リサイクルボックスに集まったゴミを売る生徒

 

スバイリエン市のゴミ回収車に聞き取り調査をしている様子。 「回収していて、つらかったことは何ですか?」 「私達がゴミを捨てているお蔭で、あなたたちは生活できるんでしょう?」と言われたことです。」

スバイリエン市のゴミ回収車に聞き取り調査をしている様子。
「回収していて、つらかったことは何ですか?」
「私達がゴミを捨てているお蔭で、あなたたちは生活できるんでしょう?」と言われたことです。」

 

市長や学長は、取り組みのリーダーとなってくれた。その結果、行政・最終処分場・市民の間で連携がとれ、市民全体の気付きに繋がり、リサイクル教育の効果が現れ市内のゴミ問題の改善につながった。
この市の事例より、廃棄物問題は地域での「リレーションシップ・リーダーシップ・トレーニング」が、解決のための一つの方向性を示すのではないかと考える。

コンポントム:遺跡に手作りのリサイクルボックス

コンポントム市内にあるサンボープレイクック遺跡群は、アンコールワット遺跡以前に建てられ、日本が保全の支援をしている遺跡でもある。雨季が終わる10月頃には、沢山のホタルも見ることが出来、自然と遺跡を堪能できる観光地として価値の高い地域である。しかし、また遺跡内でもペットボトルやプラスチック類が沢山見られゴミ問題が深刻である。

私は、地域の子供たちがこの遺跡に誇りを持っていることを知り、彼らに向けてリサイクル教育を実施した。そして、村の人達と手作りのリサイクルボックスを設置し、子供たちとともにペットボトルや缶を拾った。彼らが、これからもこの地域を守ってくれることを願っている。

コミュニティーの子供達とゴミ問題についての話し合い

コミュニティーの子供達とゴミ問題についての話し合い

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大森 幸子(おおもり さちこ)

24年間理科教師として従事した。その後、大学院で地球環境学を専攻し、途上国の環境教育について研究を進めた。JICAシニア海外ボランティアとして、サモア、マーシャル、ヨルダンの短期派遣に続き、カンボジアの長期派遣で環境問題に取り組んだ。

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