文:大森 幸子(JICAシニア海外ボランティア)
プノンペン:若者たちの思い
カンボジアでは、ここ数年近代化が急激に進んでおり、都市部での人口増加に伴った廃棄物問題は深刻な状況である。道路に捨てられたゴミは、大量のハエや蚊が発生しているだけでなく、大雨が降るとこれらのゴミは道路に流れ出て、排水溝を詰らせ町は水浸しになる。
首都プノンペンでは、毎週様々なイベントが行われており、私はそれらに参加しリサイクルの意義や分別を呼びかけるとともに、若者たちからこの国のゴミ問題についての考えを聞くよう心掛けた。
大学では、日本の環境問題の歴史や、現在の日本の取り組みなどを紹介する講義を継続して行った。学生たちは、自分たちのゴミ問題を重要な課題として捉え、興味を持って取り組んだ。彼らの学んだことを、一人でも多くの人に伝えるため、環境ポスターを描くことにした。
彼らは、クレヨンで絵を描いた経験がほとんどなく、最初は戸惑っていたがすぐに自分たちの考えを一気に描きあげた。若者たちは、美しいカンボジアをいつまでも守って行きたいと考えているのである。
スバイリエン:問題改善の秘訣はリーダーシップトレーニング?
スバイリエン市は、カンボジアの中でも最貧困地区で最も汚い地域とも言われている。なぜなら、この地域の住民のほとんどが農業従事者であり、収入は天候に左右されるため安定しないからである。
私は、市役所や最終処分場の担当者、そして市民にリサイクルの啓発活動を行い、その効果や、リサイクル製品が出来る仕組みについて説明を繰り返した。
スバイリエン大学では、リーダー育成を目指しリサイクルについての教材を作成するとともに、リサイクルボックスも設置した。集められた資源ゴミの売り上げは、1年間で29ドルに上り、学生たちはそのお金で箒やゴミ箱を買うなどしてさらに活動を進めた。彼らは、この取り組みを広げるために、全校生徒へプレゼンテーション、市民向けラジオ放送、ポスター展示で呼びかけた。
市長や学長は、取り組みのリーダーとなってくれた。その結果、行政・最終処分場・市民の間で連携がとれ、市民全体の気付きに繋がり、リサイクル教育の効果が現れ市内のゴミ問題の改善につながった。
この市の事例より、廃棄物問題は地域での「リレーションシップ・リーダーシップ・トレーニング」が、解決のための一つの方向性を示すのではないかと考える。
コンポントム:遺跡に手作りのリサイクルボックス
コンポントム市内にあるサンボープレイクック遺跡群は、アンコールワット遺跡以前に建てられ、日本が保全の支援をしている遺跡でもある。雨季が終わる10月頃には、沢山のホタルも見ることが出来、自然と遺跡を堪能できる観光地として価値の高い地域である。しかし、また遺跡内でもペットボトルやプラスチック類が沢山見られゴミ問題が深刻である。
私は、地域の子供たちがこの遺跡に誇りを持っていることを知り、彼らに向けてリサイクル教育を実施した。そして、村の人達と手作りのリサイクルボックスを設置し、子供たちとともにペットボトルや缶を拾った。彼らが、これからもこの地域を守ってくれることを願っている。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。