文:鴨川 光(ジャパンGEMSセンター研究員)
そもそもの目的を考える
先日ある教育関係の方から「子どもたちに意見を求めても誰も手を挙げてくれないのですが、どうしたらいいですか?」と質問されました。僕は思わず「どうして挙手しなければならないんですか?」と聞き返しました。子どもたちに問いを投げかけるとき、ついつい「一人ずつ順番に」という暗黙のルールを設定してしまいがちです。でも、これは何のためでしょうか?
問いを投げる目的は大きく3つあると考えています。1つ目は、子どもたちが今どのようなことを考えているかを確認するため。2つ目は、お互いの考えを聞いて、自分の考えを深めるため。3つ目は、大人が一方的に話すのではなく、子ども自身が学びをつくる時間をとるため。これらに適う方法は挙手ではないと感じています。
理想像をイメージして手段を選ぶ
例えば、30人の子どもたちとプログラムをやっているとします。意見を言う時間が5分間あるとして、一人ずつ手を挙げて発言していったら、30人中何人の意見が聞けるでしょうか? そして、一人が発言しているとき他の子は主体的に学びに参加できているでしょうか?
こういうとき僕は、「全員が発信者になる」ことを大切にしています。一番よく使うのは、こちらの投げたお題について近くの2、3人でペチャクチャしてもらう方法。子どもたちの間を歩きながら話に耳を傾けることでたくさんの考えが聞けます。話すことが苦手そうな子が多い場合や、じっくり言葉を紡いでほしいときは、A5サイズの白紙を全員に渡して書いてもらうようにします。それを張り出すなどして全体で共有すれば、人前で話す緊張を味わわずに済みます。
小グループや個人作業の時間をとることで、ただ聞くだけの時間が減り、より多くの考えに触れることができます。それだけでなく、周りがみんな活動している状況なので、そっと気になる子のサポートにも入りやすくなります。
ついやってしまいがちなベタなアプローチも、何を目的にしているのか、そしてどういう状態を目指すのかを改めて考えると、もっと適切な方法が見えてくるかもしれませんよ。
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