文:上野 直哉
知ってもらいたいソロモン諸島
「ソロモン」と聞いて皆さんは何を想像されるでしょうか。国の名前だと知っている方はとても少ないのではないでしょうか。第二次世界大戦時、ガダルカナルの戦いと言うと知っていると思います。ソロモンの人々は戦後の日本からの支援に対してとても感謝しており親日家です。そのため私の活動はとてもスムーズに行うことができました。
私はソロモン諸島の西に位置する人口3000人ほどのギゾという町の町役場に派遣されました。周囲にひろがる青い空、青い海はとても印象的で、だからこそ、町中に散乱し海に浮くごみの多さを目にした時のショックは大きいものでした。ギゾではごみ箱に捨てる、ポイ捨てをしてはいけないという考え方はありませんでした。
日本のようなごみ回収システムを目指して
ごみが散乱する原因として、回収システムが確立されていないことが挙げられます。そこで私は役場職員とともに、日本のような、地域に密着したごみの回収システム作りに取り組みました。取り組みを進めるにあたって、活動の中心はソロモンの人々であることを常に意識するよう心がけました。そうすることで、現地の人の自発的な活動を生み出せると考えたからです。
具体的な活動として、まずギゾの町を七つの地区に分け、それぞれコミュニティ委員会を作りました。次に、各委員会メンバーが区のリーダーとして活動できるよう、ごみに関する知識を得ることを目的とした、ワークショップを開催しました。そこで身に付けた知識をもとに委員会メンバーが主体となり、地区の問題点を考え、さらに啓発活動を行いました。
しかし、こうした活動が何もかも順調に進んでいたわけではありません。委員会メンバーはボランティアで構成されており、積極的な地区とそうでない地区とで活動に差がでました。
一方では、自分の住んでいる場所を以前より気にかけるようになり、地区の問題に対して積極的に取り組む住民がでるようになりました。例えば、ごみが溜まっている場所があるので片づけてほしい、ごみ拾いをしたいからビニール袋や手袋を支給してほしいなどの意見がでました。ごみ問題に対する啓発活動を住民主体にしたからこそ、理解がはやかったのだと思います。
委員会を作ることと並行して、ギゾ町役場では回収ステーションの設置を進めました。啓発活動でごみをごみ箱に捨てることが大切だと伝えても、最終的に処理する場所がなければ意味がありません。そのため、ギゾ町役場では回収ステーションを地区に最低一つは設置し、住民にごみを回収ステーションに持ってきてもらおうと考えました。
未来に向けて
人やお金が足りないため、国の政策として環境問題に取り組みにくいソロモンでは、このような地域住民による自発的な活動がカギを握ると考えます。人は生きていく上で、ごみを出してしまいます。ごみ問題は一生付き合い続けなければならない問題なのです。将来取り返しのつかない状態にならないよう、これからもソロモンの人々には取組み続けて欲しいと思います。世界で一番きれいな海を保つために。
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- 海辺の環境教育フォーラムと、その参加者による協働プロジェクト
- 正会員と職員で JEEFの将来を考える
- ごみ箱に捨てる習慣のない国で(ソロモン諸島)
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