文:鴨川光(ジャパンGEMSセンター研究員)
言い訳の贖罪
「あなたにはまだ難しいかなぁ〜」子どもにどう説明していいかわからないとき、つい言ってしまいがちな台詞ですよね。しかし、「まだ」と言っている割に「さぁ、今が〇〇について学ぶ絶好のタイミングよ!」とは大人はなかなか言いません。その子の学びはストップされたまま時が過ぎ、「これは難しいことなんだ」ということだけが心に残ります。
興味を持ったときに学ぶチャンスやサポートが得られず、これはあなたにできる・できないと大人が判断してしまう| 僕は学ぶことが嫌いになる原体験はここにあるのではないかと感じています。
では、子どもたちの学びたい瞬間に私たちはどう関わったらよいのでしょう?
僕が大切にしているのは、「答え」ではなく「学び方」を示すことです。どうやって調べたら情報が得られるのか、どこに注目すればヒントが見つかるのか、なんだったら自分が同じような状況をどうやって切り抜けたかを話すこともできるかもしれません。
答えが合っているかどうかはオマケみたいなもので、そこにたどり着くまでのプロセスを「学び」っていうんだよ、というメッセージを伝えます。
答えは必要?
常に答えを教えようとしても、あまりポジティブな結果が生まれません。例えば、自分が自信のないことを聞かれると、大人としての権威を守るために言い訳をしたり、適当にごまかしたくなります。あるいは、自分が持っている知識がいつの間にか更新されていて(漢字の書き順だって30年前とは違う)、間違ったことを自信満々に教えてしまうこともあるかもしれません。
そして仮に「正しい」答えを教えられたとしても、今度は子どもが自分で学ぶことをやめてあなたに依存するようになってしまう可能性もあります。
答えを教えないことは決して逃げではなく、子どもたちの自ら学ぶ力と意欲を育てる強力なサポートです。子どもたちから質問が来たときは、子どもたちの学びたい気持ちに寄り添ったサポートを発動してみませんか?
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。