機関誌「地球のこども」 Child of the earth

森づくりと家づくり。持続可能で豊かな暮らし 2017.12.18

写真:木曽馬の琴姫と長女。馬もキコリさんたちと一緒に森林で働く仲間です。

文:大場 江美(NPO法人しんりん

森林にやさしいハイブリッド林業 エコラの森

かつて日本には、木を生かし使い切る文化がありました。現在は作業効率や経済優先で、間伐した木材をそのまま山に放置し、荒れた森も多く存在しています。

宮城県大崎市鳴子に「NPO法人しんりん」が森林整備活動の拠点としている「エコラの森」があります。大規模な林道整備に必要な大型の高性能林業機械を使わず、小型バックフォーと小型林内作業車を使い、森林への負荷をかけない自伐林業スタイルで、持続可能な森づくりをしながら整備をしています。今はそれに加え、馬での短距離搬出と組み合わせたハイブリット林業へと進めているところです。

エコラの森は約20年前にリゾート開発業者が開発に失敗した後、乱伐、放置され荒廃した約260ヘクタールの森です。皆伐されて植林が必要な場所、細い木ばかりで間伐が必要な場所など、森林整備が必要な所ばかり。

2013年には宮城県大崎市より森全体での「森林経営計画」が認定されました。小さなNPO法人ながら林業事業体として計画的に植林・下刈り・間伐を進めています。下草刈りには1頭の寒立馬、3頭の木曽馬と4頭のジャージー牛もキコリさんたちと一緒に働く森の仲間として参加しています。

寒立馬の岬

森に自由に放つ子育て

私たちが子どもの頃の田舎は、森や田んぼ、川で遊ぶのは、ごくあたりまえの日常でした。そんな私ですら、自然の中で遊んでいたことをすっかり忘れ去ってしまっていたものですから「自然学校」や「森のようちえん」の取り組みに出会い、我が家の子育ては激変しました。エコラの森に自由に放すというか。

はじめは私の方が心配していましたが、遊具など何も無くても子どもなりに自分で遊びを考えるものですね。森の中を流れる川で遊んだり、木の実を採ったり、湧き水を見つけたり、一日中走り回っています。本当に大切なことは自然が教えてくれる、自然から学ぶ、ということができているのがわかります。

生きる力が培われる反面、もう少し学校の勉強にも意欲が出ると、ハイブリットの完成! となるのですが。こればかりは欲張っても焦っても仕方ありませんね。

湧き水を探して遊ぶす子どもたち。遊び道具がなくても森の中で自分たちなりに楽しいことを見つけだす。

森林教室。栗駒山のブナの原生林に足をのばして。広葉樹の豊かな森の巨木に圧倒されます。

家づくりの基準は不自然でないこと

森で除草剤を撒かずに育てられた木は、製材工場でも防虫、防カビ剤などを使用せず、燻煙加工を施した木材へと加工されます。家づくりで使われなかった木材は、家具や木製小物、木質ペレット燃料へと廃棄する部分無く木の命を全うします。

また、安全に配慮した木材での家づくりは、素材そのものが不自然でないかどうかが基準。人も自然の一部です。住環境を整える上で、室内の空気がとても重要です。一日に身体の中に取り込むもので一番多いのは、水でも食物でも無く空気だからです。

家族で薪割り

持続可能で豊かな暮らしへ

植林活動、伐採体験、森で学ぶ林業体験など各イベントをとおして自然との共生感覚も体験していただいています。薪ストーブ、ペレットストーブ、囲炉裏、かまどの着火を我が家の子どもたちが担当することもあります。少し前までは日常にあった火のある暮らし。森はエネルギーとしても自給自足が可能な場です。

植林した木はその世代では使えず、未来の子どもたちに託すしかありません。木を育て、豊かな森を守り、日々の営みを紡ぐこと。それが自然と共生する持続可能で豊かな暮らしへとつながることだと考えています。「エコラの森」での取り組みが、そのはじめの一歩となれたらうれしいです。

大場 江美 (おおば えみ)

平成3年、製材工場に入社したことから森や木と関わる暮らしに。平成23年、「(株)サスティナライフ森の家」を設立、代表取締役。中学校1年の長女、小学校5年の長男、小学校3年の次男と3人の子どもと奮闘中。

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