機関誌「地球のこども」 Child of the earth

地域の課題解決あの人に聞きました!Vol.1海苔養殖の歴史を通じてつなげたい「ふるさと」 2018.08.22

文・インタビュアー:垂水恵美子(事業部コーディネーター)

今回のインタビューは
NPO法人海苔のふるさと会 事務局長 小山文大さん

これからの世代に伝えたい

ふるさと館のある東京都大田区はかつて海苔の一大生産地でしたが、東京湾の埋立てに伴い、大森での生産を終えました。

地域の歴史そのものである海苔養殖の歴史を、後世に伝えるための施設として、ふるさと館は10年前に開館しました。小山さんはその事務局長として、一般向けの海苔付け体験などのイベントや施設の運営をしています。

「今もまだ、海苔養殖に従事していた方々が80歳代で存命です。あと数年の間にその方たちの経験や知恵を今の世代、これからの世代にどう伝えていくかが地域の課題です。」と、小山さんは言います。

かつては自然と共にあった暮らしが、東京湾の埋立てによってその地域から消えてしまったこと、またその当時のことを知っている人たちが高齢化によって減っていることに課題を感じている小山さん。

もう一度、自然と人間の関係を結び直し、「同時に、異なる世代の人たちも結べるといいですね」と夢を語ります。

「伝える」から「つながる」へ

私も先日、海苔付け体験に参加してみました。ほとんどの参加者は地元・大森に住む方。子どもの頃に海苔付けをした親御さんが、我が子にも体験させたくて連れてきたという家族もいらっしゃいました。

地元の人がふるさと館を訪れることで、地域の文化と出会うだけでなく、作業体験を通じて世代間の交流の場にもなっているのです。

最後に小山さんは、嬉しそうにこう話してくれました。「今の世代にとっての『ふるさと』が生まれつつあることを実感しています。この『ふるさと』づくりをもっと広げていきたいです。」この言葉は、東京で生まれ育った私にとても響きました。

地方出身の友だちが語る「ふるさと」にジェラシーを感じることが多いのですが、私の「ふるさと」をしっかり見つめ直してみたくなったのです。

地域の伝統を伝えるために始めた活動が、今では地域の人たちがつながる場にもなっている-。温かい気持ちで家路につきました。

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