文・インタビュアー:金久保優子(事業部チーフコーディネーター)
今回のインタビューは
座間味ダイビング協会副会長 SEA STEP DIVERS 代表
知久博志さん
沖縄・那覇市の西方約40km、東シナ海に浮かぶ慶良間諸島のほぼ中央に座間味島はあります。透明度の高い海の青色はケラマブルーと称され「世界が恋する海」と呼ばれています。
豊かなサンゴ礁を誇る美ら海にも、保全の苦労はありました。私が毎年のようにダイビングに訪れ、海のガイドをしていただいている知久さんに話を伺いました。
オニヒトデからサンゴを守れ!
天敵関係のオニヒトデはサンゴを食べてしまうだけでなく、全身に多数ある棘は有毒で、刺される危険を伴います。
「もう何十年もサンゴの保全活動を行ってきました。危ない思いも、意見の違いもありました。オニヒトデの駆除はなかなか難しく試行錯誤の連続です。そんな中、酢酸注射による駆除の記事を見つけ、勉強し実験に成功しました。酢酸は薬害もなく、船に上げて運ぶ必要がないのでとても助かります。早速ダイビング協会員や隣の阿嘉島にも伝授しました。」
サンゴの保全以外にも、ウミガメ産卵のためのビーチの清掃、浜の漂着ごみの撤去等々、仕事は山積み。こうした地道な保全活動が実を結び、豊かなサンゴ礁が多様な生きものを育む海域として、ラムサール条約登録や国立公園に指定されました。また、ミシュラン・グリーンガイド掲載などにより、海外からの来島者も増えたそうです。(※)
※ 2005年ラムサール条約登録:登録地は座間味(ざまみ)、阿嘉(あか)、慶留間(げるま)の三つの島と、数多くの無人島が作る内海。2014年3月5日(サンゴの日) 慶良間諸島国立公園に指定。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでビーチが二つ星に掲載(フランスで発行)
新たな課題は人災!?
ところが、今度は来島者の中に、シュノーケルの際、サンゴの上に立って休憩する人が続出するようになりました。サンゴは生きものです。簡単に折れてしまいます。悪気はないけれど、認識が低いがためのいわば人災…。
来島者にどのように周知すれば、しっかりと行動につながるのか、これが今後の課題とのこと。
子どもたちの世代に残してあげたい
たまたま訪れた座間味の海に魅せられて、30年程前に埼玉県から移住した知久さん。
「座間味の海に日々感謝すると共に、この豊かな素晴らしい海と、大切なサンゴをそっくりそのまま子どもたちの世代に残したい。残しさえすれば、子どもたちもきっと同じ気持ちになると信じています。」そう優しく微笑む知久さんの穏やかな笑顔に、私も環境教育の面から一緒に何ができるか、考えてみようと思いました。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。