機関誌「地球のこども」 Child of the earth

ルーブリック導入に向けた「振り返りシート」の利用法 2019.01.11

環境教育の実践をいかに評価するか。この種の課題は環境教育の現場にいる教員や指導者、インタープリターの皆さんの「悩みの種」の一つでしょう。
近年の教育現場では、学習到達状況を整理した「ルーブリック(※1)」 と呼ばれる評価法が導入され、評価指標と評価基準によって達成水準を明確化していくという動きが活発化しています。

環境教育の実践者である読者の皆さんも、是非導入を検討されてはいかがでしょうか。

※1 ルーブリック
縦に評価指標(学習活動に応じた具体的到達目標)、横に評価尺度(レベル)が記されたセル型の配点表を指し、これを用いた評価を「ルーブリック評価」といいます。アクティブラーニングにおける学修成果の可視化を図る上で、導入が進み始めています。なお、ルーブリックに関してはネット検索で数多くの資料が入手可能です。文部科学省も中央教育審議会「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」の中でルーブリックについて言及しています(用語集及び資料編(6/9)を参照下さい。

評価指標と評価基準の設定が難しい環境教育の評価

ルーブリックを導入する際の課題は、評価指標と評価基準をどのように設けるか、という点です。
特に環境教育の場合、学習活動を通じたプログラム受講者の意識変容プロセスをどのように把握するかが非常に難しいため、ルーブリックの導入は簡単ではないでしょう。

その場合、環境教育の現場でしばしば実践されている「振り返りシート」を分析対象として積極的に活用すべきと考えています。

マイニングソフトを使って意識変容を客観的に捉える

私の教え子である山形泉さん(清泉女子大学言語教育研究所)は、勤務する大学の授業で環境教育プログラムが複数回実施される際に、学生に振り返りシートを自由記述方式で記載してもらいました。そしてこれをテキストマイニングツール((株)マイボイスが開発した「Text Voice」。テキスト型データを統計的に分析するためのソフトウェア)で分析するという研究を行いました(※2)。

その中で山形さんは、環境教育プログラムの実践を重ねるにつれ、受講者の意識が「自分対自然」から「自然の中の自分」というように、より広い関係性の中で自己と自然を捉えようという変化が生じている、と報告しています。

このように、例えば振り返りシートをテキストマイニングソフトで分析する等の活動を行えば、意識変容のプロセスを客観的に捉えることができ、ルーブリックを作成する際にも大きな参考になると思われます。

テキストマイニングソフトには、例えばKH Coder(※3) のような秀逸なフリーソフトも存在します。このようなツールを基盤に、環境教育の「ものさし」になりうるルーブリックの作成に、皆さんも是非アプローチしてはいかがでしょうか。

※2 内容は、2017年の環境教育学会第28回年次大会で報告。
※3 KH Corder 立命館大学の樋口耕一先生が開発したテキストマイニングソフト。ソフトはネットで公開し、無料でダウンロードが可能(http://khcoder.net/ を参照)。

 

中西 紹一(なかにし しょういち)

1961年生まれ。専修大学ネットワーク情報学部客員教授。有限会社プラス・サーキュレーション・ジャパン代表。ワークショップを戦略的にビジネスに導入し、イノベーション開発をサポートする業務が専門。『ワークショップ~偶然をデザインする技術』(宣伝会議、2006年)他著作多数。

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