文:西村仁志(JEEF理事)
カリフォルニアの光と影です。。
昨年の夏以降、勤務先(広島修道大学)よりカリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)への一年間の派遣研究の機会を得て、夫婦で米国に滞在しています。
私たちの住むカリフォルニア州サンタクルーズは、サンフランシスコから南に約120キロ。太平洋に面しサーフィンが盛んな、のんびりした街です。ハイウェイ17号線で峠を越えるとアップル、グーグルなどのIT企業が林立することで有名なシリコンバレー地区があります。
IT産業と、豊かな農業生産力
最先端のIT産業とは対照的ですが、サンタクルーズは一大農業地帯にも隣接し、多種多様な野菜や果物などの生産が盛んです。農家が直接出店するファーマーズマーケットが毎週同じ曜日に各地で開催され、また一般の大型スーパーマーケットの野菜・果物売り場には「LOCAL」「ORGANIC」のコーナーがあります。
ここはこうした食材を使うレストランが多く、豊かな農業生産力と消費者の意識の高さがうかがえます。私たちも日々食材の買い物を楽しみ、自分たちで料理して、おいしくいただくことを心がけています。
農業を支える人々の経済格差
ところが、こうした農場の現場作業に従事している労働者のほとんどは、メキシコや中南米からの移民です。広大な農場で数十名もが作業をしているシーンを、路上から見かけることがよくあります。
こうした農場では大規模化、高度な機械化が進んでいるものの、収穫から出荷の作業は人の手を使ってしかできないので、彼らの安価な賃金に依存せざるを得ない構造です。メキシコや南米でオーガニック栽培を行うと、さらに安く作ることもでき、さきほどのスーパーの「ORGANIC」のコーナーでは、海外産の有機バナナやアボカドなどが並べられていたりします。
サスティナビリティはこちらでも重要課題ですが、安定した食料生産、良好な自然環境や食の安全を支えることに加えて、拡がる経済格差の是正や働く人々の社会的公正を実現させるということが欠かせません。移民政策とも関連していて、これは難しいパズルだなと感じています。
地球のこどもとは
『地球のこども』は日本環境教育フォーラム(JEEF)が会員の方向けに年6回発行している機関誌です。
私たち人間を含むあらゆる生命が「地球のこども」であるという想いから名づけました。本誌では、JEEFの活動報告を中心に、広く環境の分野で活躍される方のエッセイやインタビュー、自然学校、教育現場からのレポートや、海外の環境教育事情など、環境教育に関する幅広い情報を紹介しています。